<通販カタログの製本・発送企業>【オービービー 小川浩 社長】カタログは顧客との有効な接点

  • 定期購読する
  • 業界データ購入
  • デジタル版で読む
小川 浩社長

小川 浩社長

 通販カタログの製本、印字、封入、発送業務を手掛けるオービービー(本社京都府)は1921年に創業し、今年で97年という歴史を持つ。大手通販のカタログの製本業務を主力に、長年にわたってカタログ通販業界を支援してきた。15年には埼玉県深谷市に製本と封入を担う新たな工場を建設。西日本だけではなく、東日本の通販企業の取引先を広げることで業容を拡大している。3代目となる小川浩社長に通販業界の今後の見通しと同社の事業戦略について聞いた。

 ーーー3年後に創業100年を迎える。これまでの経歴について聞きたい。

 大正時代に「小川製本所」として創業し、1951年に「株式会社小川製本所」として法人化、私は3代目の社長となる。1959年に、「大日本製本紙工株式会社」として、長く大日本印刷から依頼される仕事を手掛けてきた。その後、2002年に、ニッセンや千趣会といった大手通販会社が成長したことをきっかけに、再び株式を買い戻し「株式会社オービービー(オガワ・ブック・バインディング)」に社名変更した。カタログ通販業界に特化した製本、封入企業として事業を行っている。
 これまで特許や認証も積極的に取得してきた。カタログ選択丁合システムに関する特許「ISO 9001:2000認証」などを取得した。
 積極的にお客さまに信頼をいただけるための仕組みづくりを行ってきた。
 セキュリティー対策として、本社の各部門への入り口には内部を識別する静脈認証システムを採用、工場へは指紋認証システムを導入するなど万全を期している。

 ーーー通販会社のカタログ発行はどのように行われているのか。

 通販会社がカタログを発行する際に二つのパターンがある。通販会社が印刷と製本、封入を分けて発注する「分離発注」と、印刷会社が印刷したのち、製本、封入会社を通販会社が指名する「指名発注」だ。現在は、後者の指名発注が当社の取引では多い。

 ーーー製品や封入作業を印刷会社に丸投げすることが多いと聞く。

 印刷会社に製本や封入会社を指定せずに「丸投げ」するケースが多い。
 一般の流通業界で言えば、小売りが問屋を介さずに商品を仕入れることが多くなりつつある中で、問屋に仕入れを丸投げしているようなものだ。
 当然ながら、印刷会社に任せてしまうことで中間マージンが発生し、通販会社にとって負担になることもある。当社に切り替えた大手通販会社では、年間数億円規模で必要のない費用が発生しているケースもあった。最も大きいのは、印刷物を製本会社から封入会社に運送する際の費用だ。
 ここ数年は、導入企業の成功事例をお話することでやっと耳を傾けてくれる企業も出てきている。具体的な数値を出して商談すると「印刷会社に今までこんなにお金を払っていたのか」と驚く担当者をたくさん見てきた。最大で約半分までにコストを削減することもできるだろう。
 通販会社に選択肢を与えて選んでもらうというシンプルな仕組みにすれば、多くの通販会社に貢献できると考えている。通販会社が喜んでもらえれば、印刷部数も増えて結果的に印刷会社にも貢献できる。

 ーーー競合他社との差別化については。

 製本と封入を一体で実施している企業は当社しかない。両方できることにより、コスト面で貢献できることに加え、顧客ごとに異なったチラシを封入することできる「カタログ選択丁合システム」でセグメントした販売促進を可能にしている。通販会社が持つ顧客管理データベースを活用し、当社の特許技術を活用することでより細かな封入ができる。

 ーーー通販会社はカタログ発行部数を減らす傾向にあるが。

 取引先でも業績の善しあしでカタログ発行部数を増減させており、二極化が顕著になっている。発行部数を減らしている企業は、さらに業績が悪化するなど負の連鎖になっている。特に、アパレルを販売するカタログ通販会社で苦戦しているという話を聞いている。
 一方で、成長している企業の傾向をみると、不要なコストを削減してカタログ発行部数を増やし、しっかり売り上げを確保している。通販会社にとってカタログの発行は、お客さまとのつながりを確保するライフラインだ。
 ここ数年、カタログ通販が不振といわれるが、私は、ECかカタログかという単純な販売形態の構図ではないとみている。通販は結局、商品力が勝負を分けると思う。しっかり商品開発に取り組んでいるかどうか、手間を惜しまず開発しているかどうかが重要だろう。今までも売れていたから今年も売れるだろうといった思い込みがある限りは販売形態にかかわらず期待できる売り上げは見込めない。コスト構造も見直し、商品開発にしっかり経営資源を投資すべきだろう。
 18年は関東の大手カタログ通販会社への導入を予定しており、多くの通販会社への提案を強化していきたい。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

Page Topへ