【インタビュー】〈「独身の日」に売上4.5億円〉キリン堂 新規事業開発部・通販ネットビジネス部長 伊藤雄喜氏/”チーム日本”で中国への越境ECに挑みたい

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伊藤雄喜 新規事業開発部・通販ネットビジネス部長

伊藤雄喜 新規事業開発部・通販ネットビジネス部長

ドラッグストアチェーンのキリン堂は11月11日に開催された、中国の「独身の日セール」で約4億5000万円を売り上げた。アリババグループの越境ECサイト「天猫国際」内の日本企業ではトップの実績だったという。同社は14年3月の「天猫国際」開設時から出店し、国内の化粧品や日用品の販売に挑戦してきた。通販事業の陣頭指揮を執る新規事業開発部・通販ネットビジネス部長の伊藤雄喜氏は、「これからは『チームジャパン』で中国市場に挑戦したい」と意気込む。中国越境ECのトップランナーに中国市場の難しさや可能性、今後の展望について聞いた。

日本企業で1位

 ─今年の独身の日の成果は。

 今年は約4億5000万円の売り上げになりました。「天猫国際」内の日本企業では1位、全体では4位だったと聞いています。咋年は約1億8700万円の売り上げでしたから2倍以上に伸ばすことができました。昨年の実績をもとに、今年はメーカーさまとの協力体制を強化できたことが大きかったです。
 特にジャパン ゲートウェイさまとはヘアケアブランド「レヴール」の販売において強いパートナーシップを組むことができました。「レヴール」のシャンプー・トリートメントだけで15万本以上の販売となりました。これは咋年の2倍以上の実績です。購入者にはジャンパン ゲートウェイさまのクレンジングシートやハンドソープなど別の商品をサンプルとして提供しました。
 ただ安売りするだけではなく、メーカーさまとともに、”次何を売りたいか”を考え、戦略的に販売を促進できたことが大きな成果につながったと思います。こうした姿勢にご理解をいただき、大手NBメーカーさまにも協力していただけるようになりました。

 ─そもそも越境ECに取り組むきっかけは。

 私が4年前に新規事業開発部に着任し、国内のECサイトの運営を任されることになりました。年商1億円もない事業でしたが、当社の会長からは「年商100億円を目指してこい」と言われましたので、「ECには何か可能性があるのかもしれない」と半信半疑ながら、「やるしかない」と思いました。
 ECサイトの品ぞろえを拡充したり、販売チャネルを増やしたり、さまざまな取り組みを行いました。東日本大震災を機に、当社のサイトを知ってもらえた方もたくさんいました。国内のEC事業が軌道に乗ったときに、アリババの担当者さまが当社に訪れました。いらっしゃったのは13年10月でしたが、14年3月にオープンする「天猫国際」の出店のお誘いをいただきました。

 ─そこですぐに出店を決めたのですか。

 当時は4人の事業部で国内でも手一杯でしたし、その頃はまだ越境ECもアリババグループのこともよく分かりませんでしたので、すぐに出店するとは言えませんでした。アリババの担当者さまには熱心にお誘いをいただきましたが、なかなか決断できずにいました。中国市場のことを分からない中で考えてもらちが明かないと思い、その担当者さまに「一度、中国に連れて行ってほしい」とお願いしました。
 14年1月に初めて中国に訪れると、そのスケールの大きさに驚きました。上海の中心地は東京以上に華やかですし、地下鉄などはIT化が日本よりも進み、スマホを使っている乗客もたくさんいました。杭州にあるアリババの本社ではさらに驚かされました。敷地の広さや先進的なビル、スタッフの多さなどに圧倒されました。中国の勢いを肌で感じ、挑戦しないことが一番のリスクだと思いました。
 私は乗り気になりました。社内調整は大変でしたが、最後は社長に直談判して、1時間以上プレゼンし、「1年間だけ私に預からせていただきたい。もしダメだったらクビにしてください」と覚悟を伝え、ようやく許可を受けました。

続きは「日本流通産業新聞」11月26日号で)

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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