〈メタバース〉 リアル体験をVRで創出/メタバースコマース流行の兆し (2022年1月13日号)

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VR店舗で高度な接客が可能に

VR店舗で高度な接客が可能に

 「メタバース」と総称される、オンライン上に構築された仮想空間内でのコミュニケーションが注目を集めている。近年は、企業がVR(仮想現実)店舗を開設してブランドの訴求や実際の商品を販売する事例が増え、ECの1チャネルとして活用が進んでいる。店舗スタッフや他者とのコミュニケーション、仮想空間内での発見がひも付くメタバース内での商取引は、既存の通販・ECにはなかった新たな購買体験が創出されている。22年はメタバースを舞台にしたメタバースコマースが、新たな商流として存在感を増していきそうだ。

■FB社名変更で加速

 オンラインの仮想空間内で、遠隔地の人間がアバターを介して高度なコミュニケーションを行えるのがメタバースの特徴だ。このような利点から、メタバースは主にオンラインゲームなど娯楽性の高いコンテンツやインターネットを起点としたコミュニティーなどで活用が進んでいた。
 コロナ禍でリアルの交流が制限されたことが、メタバース利用の拡大につながった。バーチャルオフィスやオンライン展示会などでの活用も多くなり、実生活への浸透も進んでいる。
 21年10月にフェイスブックがメタバースをオンライン上のソーシャル体験の次なる進化と位置付け、社名を「Meta(メタ)」へ変更したこともその流れを加速させた。VRヘッドセット「Oculus(オキュラス)」を軸に、関連するアプリやサービスの提供を事業の中核に据えている。
 「フェイスブック」や「インスタグラム」といった大手SNSを持つ同社のメタバースへの注力は、今後のSNSマーケティングの在り方にも影響を与えるだろう。
 経済活動の場としてメタバースの発展が進む中、メタバース上で商品の販売や販促を行う動きが近年急速に高まっている。


■自然な接客が可能に

 VRコンテンツの開発を手掛けるHIKKY(ヒッキー、本社東京都)は、メタバース上で「バーチャルマーケット」というVRイベントを定期的に開催している。24時間開かれたオンライン会場に、世界中から100万人超のユーザーが来場する業界最大規模のイベントだ。
 こうしたメタバース上でのイベントも、商品やブランド発信の場として企業の活用が進んでいる。
 21年12月に開催された「バーチャルマーケット2021」には、従来の主要出展層であったVRクリエイターに加え、約80社の企業がブースを出展した。
 アパレル大手のビームス(本社東京都)は、VR店舗「BEAMS(ビームス)バーチャルショップ」を開設。アバターが身に着けられるデジタルコンテンツに加え、アパレル・雑貨といったリアル商品も販売した。
 3Dで構築されたVR店舗はユーザーが自由に散策でき、実店舗のように商品を手に取って閲覧することが可能だ。
 会期中の日中には、「BEAMS」の実際のスタッフがアバターを通じてリアルタイムでの接客を行った。ヘッドマウントディスプレー(HMD)やコントローラーを使うことでスタッフの細かい動きもアバターと連動し、より自然な形での接客が実現できたという。
 こうした体験やコミュニケーションの双方向性がメタバースコマースの大きな特徴であり利点となっている。
 「バーチャルマーケット2021」の会期中には、人気バンド「東京事変」の広告がメタバース上に再現された渋谷駅周辺一帯を埋め尽くすなど、リアルさながらの広告展開も行われた。メタバース上でのプロモーション施策も高度化が進み、ブランド発信や販促の手段として有用性を発揮している。
 HIKKYの舟越靖代表は、「未来の姿として取り上げられがちなメタバースでのECだが、先進的な企業を中心にすでに取り組みが進んでいる」と指摘する。


■新たな商品訴求実現

 仮想空間内にVR店舗を開設し、3Dモデルで構築した商品を発信するのが現在のメタバースコマースの主流だ。VRを活用することで、既存の通販・ECとは異なるアプローチでの商品訴求が行える。

(続きは、「日本流通産業新聞」1月13日号で)

メタバースでの広告展開も活性化

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凸版印刷はメタバースモール「メタパ」を提供開始

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