【アパレル・ファッション業界のOMO施策】 顧客体験の向上に向け活発化/「実店舗受け取り」「アプリ」の活用進む(2021年10月21日号)

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ヘリカルコードの売り込まない実店舗では、ジュエリー試着・カフェなどを楽しめる

ヘリカルコードの売り込まない実店舗では、ジュエリー試着・カフェなどを楽しめる

 コロナ禍において、ECとリアル店舗の境界をなくし、顧客体験の向上を目指すOMO(オンラインとオフラインの融合)に取り組むアパレル・ファッションEC企業が増えている。実物の「質感」「サイズ感」「機能性」などの体感が重要になるアパレル・ファッションは、特にOMO施策との相性が良いようだ。21年3月期のEC売上高が前期比32%増になったワークマンのECでは今や、店舗受け取りの利用者が7割以上となっている。オンワードホールディングス(HD)では、ECで注文した商品を実店舗で試着できるサービスを展開しており、利用者が増加している。同社では、OMOに対応できる店舗の拡大を進めている。アパレル・ファッションEC各社では、アプリを活用したOMOの取り組みも進んでいるようだ。

■実店舗活用で9割がリピーターに

 ワークマンでは、コロナ禍にあってもEC事業が順調に拡大を続けている。21年3月期のEC売上高は前期比32%増の24億4000万円となった。
 OMOの施策を推進したことが、EC事業の拡大につながっているようだ。
 同社では、全国の実店舗919店を、自社サイトの顧客の商品受け取り拠点として活用している。顧客には「送料無料」「店舗に在庫があればすぐに受け取れる」といったメリットを提供している。現在では、ECサイト利用者のうち7割以上が店舗受け取りを利用しているという。
 ワークマンでは、「当社の場合、販売する商品の約6割がPB(プライベートブランド)だ。機能性・価格などの商品力が評価されており、即完売することも少なくない。その多くの顧客が、ECを介して、実店舗での取り置きサービスを利用してくれている」(営業本部EC事業部・加藤健部長代理)と話す。
 21年9月度の取り置きの依頼件数は、前年同月比で140倍となったという。売り上げは同290倍になったとしている。21年4―8月の約5カ月間においても、取り置きを利用した売り上げは前年同期間比で約30倍となったそうだ。
 同社のOMOの取り組みは、実店舗の収益拡大にもつながっている。「当社の調査では、商品を受け取るために一度来店した人は、来店への障壁が下がることが分かっている。作業服などを購入する『プロ顧客』が実店舗に初来店した場合は、約9割がリピーターになる。一般顧客の場合でも、約6割がリピーターになってくれる」(同)と言う。商品受け取りのために実店舗を訪れた顧客が、他の商品の良さを体感し、ワークマンブランドのファンになることも少なくないのだという。
 OMO施策は、ECにおけるLTVの拡大にもつながっている。
 同社によると、「実店舗を利用してくれる顧客は、ECだけの場合よりも、LTVが高くなる傾向がある。ECと実店舗を併用する人は、年間の購入総額が一人あたり約10万円上がる」としている。
 ワークマンでは、OMOの取り組みがコスト削減にもつながっている。実店舗への配送便に、ECで発注のあった店舗受け取り商品を相乗りさせることで、配送コストを削減。EC専用の在庫をなくした結果、外部倉庫も不要になったという。


■実店舗取り寄せ87%が利用

 ワークマンに限らず、実店舗を、EC利用者の商品の受け取り拠点として活用するアパレル・ファッション企業は多い。「実物の確認・試用」ができたり、「商品をより早く入手」できたりするサービスとして定着しつつある。以前から店舗受け取りサービスを提供していた企業が、コロナ禍を機に展開を加速するケースも少なくないようだ。
 オンワードHDでは、21年4月からOMO店舗の出店を拡大している。

(続きは、「日本流通産業新聞」10月21日号で)

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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