〈消費者委員会〉 反対の意見相次ぐ/「消費者の承諾」の確保も論点に

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 消費者委員会は1月24日の本会議で特定商取引法を改正して訪問販売や連鎖販売取引で交付する書面を電子化する案について議論した。消費者保護の観点から委員からは反対の意見が相次いだ。電子書面を交付する際に、「消費者の承諾」をどのように担保するかも論点となった。
 全国消費生活相談員協会の増田悦子理事長は会合で、反対の姿勢を明確にした。増田理事長は、オンライン書面交付を可能とする法改正は新たな消費者トラブルを増加させる可能性があるとした。
 さらに「消費者のオンラインに対するリテラシーの問題」「クーリング・オフなどの記載を一目で探しにくくなる」といった問題を指摘した。増田理事長は、「スマホを買い替えて紛失する、設定によって添付データを受け取れないということが容易に推測できる」と語気を強めた。
 丸山絵美子委員(慶應義塾大学法学部教授)は、「オンラインなどで書面を交付した際に、交付したということが分かるようなリマインド機能が必要になる」と意見した。これに対し、増田理事長は、「パソコンを毎日見る人は少なく、リマインドで通知したからといって必ず確認できるという訳ではない」と疑問を呈した。
 片山登志子委員(弁護士)は、「書面の電子化により、消費者被害の拡大につながる恐れがある」と、オンラインでの書面交付に反対の姿勢を示した。
 一方で、(公社)日本訪問販売協会(事務局東京都、竹永美紀会長)の大森俊一専務理事は、会員社から「書面をオンラインで交付できないか」という相談が多数寄せられていたと明かした。
 その上で、「業界でのデジタル化は未知数だが、電子化した書面を交付できれば事業者の利便性は向上する。電子化によって、『書面不交付』といった違反行為も防止できるのではないか」(大森専務理事)という見方を示した。
 大森専務理事によると、電子書面を交付するプロセスについて、販売員が持参しているノートパソコンやタブレットから、書面を消費者の電子機器に送信することを想定している。予想している交付手段は、(1)電子メールでの添付(2)ファックスやメールで書面のURLを送信─の2点だという。
 山本隆司委員長(東京大学大学院法学政治学研究科教授)は、「電子書面の交付に必要な『消費者の承諾』をどのように得るのか」と質問。これに対し、大森専務理事は、「録音やタブレット端末へのサインなどで、『消費者の承諾』を担保することを想定している」と話した。
 消費者庁取引対策課の笹路健課長は、「トラブルの際には、消費者がフォーマットへの入力など形式的な同意をしただけで正当な『承諾』となる根拠にならないような仕組みも必要」と話している。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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