楽天 〈”送料無料ライン”を全店統一〉/三木谷社長「楽天市場の歴史で最大の挑戦」

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送料無料ラインを統一化する戦略「ワン・タリフ」を発表

送料無料ラインを統一化する戦略「ワン・タリフ」を発表

 楽天は1月31日、「新春カンファレンス2019」において「楽天市場」の全店舗で”送料無料ライン”を統一する戦略「ONE  TARIFF(ワン・タリフ)」を発表した。三木谷浩史社長は、「楽天市場の歴史の中で最大の挑戦かもしれない」と今回の取り組みの重大さを説明。冷蔵・冷凍や大型サイズの商品、配送先が離島である場合は対象外となりそうだ。出展者の声も聞いた上で送料無料となる購入金額を決定するという。19年中に送料設定の改定を目指している。

■弱みは統一性のなさ
 楽天の三木谷社長は、「『楽天市場』の強みは個性的な店舗さま、弱みは配送などの統一性がないことだ」と現状を分析した。その弱みを克服すれば、流通総額の成長率を20〜30%に高められると見ている。
 「送料満足度調査によると他社に負けている(画像(1)参照)。送料が原因で購入をやめたケースは、楽天市場が68・3%あったのに対し、アマゾンでは57・4%だった(画像(2)参照)。送料についての印象もあまり良くない(画像(3)参照)」(三木谷社長)と話す。
 楽天が消費者の求める配送料タイプについて調査したところ、回答者の64%が「〇〇円以上で送料無料」が最も魅力的と答えた。「月額〇〇円で送料無料」は19%、「何を買っても送料〇〇円」は17%にとどまった(画像(4)参照)。
 「送料無料といっても世の中無料のものはなく、どこかで払っている。それは年間のサブスクリプションフィーかもしれないし、商品の値段に含まれているかもしれない。お客さまはばかではないので、すべて無料ということはないと分かっている」(同)と説明した。

■送料の一部負担か
 三木谷社長と親交のあるマルコス・ガルペリンCEOが展開する南米最大のマーケットプレイス「メルカドリブレ」は、送料無料ラインを統一後、流通総額が16年には28・2%、17年には40%以上の成長を遂げた(画像(5)参照)。この成功事例が送料無料ラインを統一化する一つのきっかけとなったという。
 「実は『楽天市場』の80%以上の店舗さまが『〇〇円以上で送料無料』と設定している。ただ、その設定金額はバラバラで2500円以上の場合もあれば、5000円以上の場合もある。統一化されていないことでユーザーに送料が高いという印象を与えてしまっている」(同)と話す。
 三木谷社長は送料設定の変更に際して「かなりの資金投入をする準備がある」と話す。具体的に何に投資するかは明らかにしていない。ただ、「メルカドリブレ」は、送料無料ラインを超えた商品の送料の半分を負担しており、楽天も送料の一部を負担する可能性もある。

■店舗の声を聞く
 楽天は今後、個別ヒアリングやタウンミーティングのようなイベントにおいて、送料設定変更に対する店舗の声を聞き、サービスの具体的な内容を決めていくという。
 「(送料設定変更という)難題に今年は皆さんと一緒に取り組んでいきたい。送料無料ラインを統一化することで『楽天市場』全体の満足度が飛躍的に向上し、注文がどんどん舞い込むようになる。店舗さまの個別の事情は必ずあると思う。『楽天市場』の4万6000店舗が一体となって取り組むことで、世界に類を見ないマーケットプレイスの継続的かつ大きな成長を実現したい」(同)と意気込む。

■後払い決済も発表
 楽天は「新春カンファレンス2019」において、1月31日から後払い決済を開始することや、出店者やユーザーなど10万人規模の参加を目指すイベント「楽天オプティミスカンファレンス」を開催することなども発表した。
 「新春カンファレンス2019」には約4000人の出店者が参加した。来場者は講演や相談会、展示ブースなどに参加し、今後の「楽天市場」の店舗ノウハウを収集したり、戦略立案に役立てたりしていた。

【画像①】楽天市場の送料満足度はアマゾンより低い

【画像①】楽天市場の送料満足度はアマゾンより低い

【画像②】楽天市場の方が送料による離脱が多い

【画像②】楽天市場の方が送料による離脱が多い

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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