〈通販企業〉 ”メールが届かない”/連絡手段をLINE、チャットに移行

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メールからLINEやチャットに切り替えたエステティクスの高橋秀典氏

メールからLINEやチャットに切り替えたエステティクスの高橋秀典氏

 「メールが届かない」と嘆く通販会社の声を聞く機会が増えた。「メールの開封率が下がった」という話ではなく、物理的に「メールが届かない」のだという。コスメECを手掛けるエステティクス(本社東京都、齊藤慶和社長)は、「コンビニ決済の入金率が下がったことからメールが届いていないことに気付いた」(マーケティングプランナー・高橋秀典氏)と振り返る。同社はメールの配信トラブルを回避するため、顧客とのコミュニケーションツールをLINEやチャットに移行した。さまざまなLINEやチャットのツールが登場しており、今後はコミュニケーションツールの移行が進む可能性もある。

 スパムメール(一方的に大量送信されるメール)の拡大により、メールソフトやメールサーバーの受信規制が強化されている。有力なメール配信システムは規制対策を講じているが、配信サーバーの評価が低いシステムなどから送られたメールは届かないケースが増えているのだという。
 大手メール配信システム会社の担当者は、「配信サーバーのIPレプュテーションという、簡単にいうと優良度スコアのようなものがあり、スコアの低い配信サーバーからのメールをメールソフトが受け付けない仕組みになっている。低価格のメール配信ソフトだとメンテナンスがきちんとできておらず、メールが届かない事態が生じている」と話す。
 通販企業によってメルマガはメール配信システムを活用するが、注文受け付け後のサンクスメールはカートのメール機能で送っていたり、リピート購入を促すためのメール施策にはマーケティングオートメーション(MA)を活用していたりするケースが多い。メール配信システムが分散することで、スパム規制に対応しきれていないケースも多いようだ。


■入金率が激減

 エステティクスはメーキャップコスメブランド「DAZZSHOP(ダズショップ)」の実店舗を百貨店などに展開しているが、売り上げの約4割をECで売り上げており、メールでのコミュニケーションがCRMの重要な鍵となっていた。
 16年ごろからメールが届かない事態が頻発し、メール配信サーバーを変えるなどの対策を練ったが、思うように解決できなかった。注文後にメールで支払い方法が届くコンビニ後払い決済の利用率が高かったこともあり、メールの配信障害は大きな課題だった。
 同社はこの事態に対応するため、ECサイトのマイページ内にチャットボックスを設置。さらにLINE@を活用し、顧客との連絡手段を拡充した。
 「メールでの問い合わせ対応や、注文確認の連絡などをやめた。すべての連絡手段をチャットボックスに集約し、未確認のユーザーにはLINEでリマインドしている。こうした取り組みで最大60%くらいまで下がったコンビニ決済の入金率は80%以上に回復した」(高橋氏)と話す。

(続きは、「日本流通産業新聞」6月14日号で)

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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