《注目企業分析》髙島屋「ローズキッチン」/店頭との連動が業績向上に貢献/外商による対面でリピート向上

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「ローズキッチン」の期間限定チラシ

「ローズキッチン」の期間限定チラシ

 高島屋が首都圏を中心に地域限定で展開する食品宅配サービス「ローズキッチン」は、外商顧客に対する営業活動を強化したことで、17年2月期の売上高が前期比35.0%増の7億5000万円と好調だ。16年9月に組織変更し、百貨店ごとに店頭と外商が連携することで成果が上がっている。18年2月期の売上高は前期比60%増の12億円を計画している。
 14年6月に事業を開始し、今年で3年目を迎えた。月1回のペースで商品カタログを発行。事業開始当初はネットによる拡販を狙ったが、実際の顧客層は60代から80代が中心だった。このため、受注の8割以上が電話で平均月2回の利用となっていた。こうしたことを踏まえ、2年目に外商から顧客の紹介を受けて営業強化を図ってきた。「事業を拡大するには事業部単体では限界がある」(MD本部・荒木繁氏)と話す。高島屋では16年9月に宅配事業部門を「クロスメディア事業部」から本社組織内部署に移し、その後今年3月からは「MD本部」に移管している。宅配事業の売り上げを百貨店の店舗に計上するように仕組みを変えた。
 現在までに首都圏の8店舗と連携。連携開始後、店頭と両方で購入している会員が6割を超えていたことが分かった。
 このため、店舗ごとに実施していた企画をローズキッチンで集約。新米やワインの販売も店舗ごとに実施していたが、ローズキッチンで仕入れやチラシ作りを取りまとめることで、店舗側の負担を減らして販売に集中できるようにした。
 新規顧客獲得では、カードホルダーへのDM発送が半数で最も多い。通販会員へのDM発送からの入会は2割、そのほかが店頭もしくは外商、メルマガ会員となっている。外商顧客はリピート率が高く、「浮気が少ない」(同)と手応えを感じている。
 商品戦略では、店頭と並行して購入している人が6割という状況を踏まえ、競合他社で取り扱うことができない商品やデパ地下商品などを強化した。月1回発行するカタログでは全体の3割に、店頭では販売しない独自商品を掲載している。ローズキッチンの専属バイヤーを3人配置し、品ぞろえに独自性を打ち出している。
 組織変更に伴い、MD本部として商品を仕入れることで、百貨店のスケールメリットを生かし、通常では仕入れが難しい食材の仕入れも可能になったという。「百貨店、宅配、ギフトのチャネルで展開することで、単独では仕入れることができないブランドも取りそろえることができ商品の幅が広がっている」(同)と話す。高崎店や大宮店といった地方店舗にとっては、カタログを活用することで〝売り場〟を広げることにつながっている。
 月1回のカタログに加え、外商顧客だけが購入できるチラシを企画したり、期間限定で注文できる商品企画チラシを同梱することで、購入回数を増やしている。また、2~3カ月に一度、外商顧客を店舗の外商サロンに招く「ウエルカムデイズ」で試食会も開くことで接点を確保している。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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