物価や人件費の高騰、人材確保の難しさを理由に、高齢者向けに冷蔵弁当や総菜を販売する食品宅配企業が自社便配達から撤退するケースが目立ってきた。東京や埼玉で高齢者向けの宅配事業を手掛ける武蔵野フーズ(本社埼玉県)は9月20日に個人宅への自社便による宅配事業「健康宅配」を終了し、通販に販路を切り替えた。東京や神奈川で事業展開するベネッセホールディングス傘下のベネッセパレット(本社東京都)は12月14日に冷蔵商品の自社便配達を終了すると発表した。一方で、シニアライフクリエイト、シルバーライフ、生活協同組合、ワタミは冷蔵品の自社便配達を継続しており、宅配各社の対応は分かれている。
■ベネッセ、武蔵野フーズが終了
9月に個人宅向けの自社便配達を終了した武蔵野フーズは、その理由について「配達員の不足と、高齢化による交通事故のリスクとの兼ね合いが主な要因」(第二事業本部営業部EC課・山本恭士課長代理)と話す。
12月に配達を終了するベネッセパレットも同様の理由を挙げている。
武蔵野フーズは、東京・埼玉エリアで高齢者向けの「健康宅配」を行ってきた。サービスの終了に伴い7カ所あった営業所は2カ所に縮小。残った2拠点で高齢者施設などへの配達を担っている。
ベネッセパレットは14年から、高齢者向けの配食や施設への食材販売などを手掛ける。親会社のベネッセスタイルケアが運営する介護施設から高齢者の食事に関する課題を汲み取り、商品開発に生かしてきた。約10年間の配食提供実績は800万食以上と順調だったものの、「食材原価や配送費の高騰も冷蔵品終了の要因」(同社)としている。
この一方で、常温・冷蔵品の配達を継続する企業もこれまで通りにサービスを維持しているわけではなく、備品の選定や配送費など、店舗運営費用の削減を進める。配達エリアや拠点数の規模と、人員リスクのバランスが、冷蔵品の配達継続の境界になっているようだ。
高齢者向け宅配弁当などをフランチャイズ(FC)展開するシルバーライフは、本部から加盟店への総菜の配送費を削減するためルート便の構築を進めている。また、外部のM&A仲介企業を介して撤退した店舗を引き継ぎ、顧客も引き継いで営業費用を縮小している。
(続きは、「日本流通産業新聞」11月20日号で)
【高齢者向け宅配各社】自社便配達の終了相次ぐ/需要横ばいも人材確保に課題(2025年11月20日号)
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