カタログ通販やテレビ通販企業による、リアルを活用した顧客のLTV(顧客生涯価値)向上策が活発化している。単にポップアップイベントなどで商品を販売するのではなく、セミナーやランチ付きトークショー、散歩イベントなどで既存顧客のロイヤルティーを高めている。顧客との関係性を強化するCRMの取り組みがオフラインにまで拡張してきた。QVCジャパン、カタログハウス、ジュピターショップチャンネル、ハルメクといった有力企業の戦略に迫る。
■女性の悩みを解決
テレビを中心としたマルチプラットフォーム事業を展開するQVCジャパン(本社千葉県、伊藤淳史CEO)は24年末から女性の加齢に関する悩みなどを解決できるプログラムを本格始動している。24年11月、25年3月、7月、9月に同社の顧客を招いて、トークイベントなどを実施した。スタイリストとして人気の大草直子氏やタレントの優木まおみ、産婦人科専門医の吉形玲美医師など、毎回、さまざまなゲストを迎え、多彩なトークショーを実施している。
同社の顧客が悩むような問題に対して、有識者や芸能人など起用して、解決策や身近なエピソードを提案することで、課題解決を図る狙いだ。
デジタルストアヘッドの柴田規成氏は、「参加人数、ランチ付きか否かなど、試行錯誤を繰り返しながら、最適な方法を模索している。3月の大草さんのイベントを見て、参加者が50人くらいの方が、大草さんと参加者の距離も近く、インタラクティブな会話が生まれるのだろうなということが分かった」との見解を示す。
参加費は無料。ランチ付きトークショーでも参加者はランチ代を支払う必要はない。イベントでは、トークショーにおける悩みを解決できるアイテムを陳列するが、販売は行わない。短期的な収益にはつながりにくいが、柴田氏は会社にとって大きな挑戦に挑んでいるという。
「なぜテレビ通販企業がこのような取り組みを行っているのかという疑問もあると思うし、費用対効果はどうなのかという見方もある。特に当社は本社が海外の外資系企業なので、シビアに見られている。私個人としては、このイベントをアッパーファネル(顧客育成の初期段階)のマーケティングと位置付けている。このイベントがすぐさま大量の商品購入につながるとは思っていない。大切なのは継続することで、ある日お客さまとの関係性が深まり、結果として売り上げ拡大につながると信じている(柴田氏)と話す。
今年7月のイベントでは、参加者にイベントの様子をSNSで発信することを促した。SNSを通じた新規顧客獲得にも期待を寄せている。
■読者との関係を強化
カタログハウスは過去にセミナーを開催していたが、実店舗の開設などがあり、一旦、セミナーの取り組みを休止していた。しかし、
(続きは、「日本流通産業新聞」 10月9日号で)
【最新の通販企業のLTV向上戦略】リアル活用が活発化/イベントやセミナーでファン化促進(2025年10月9日号)
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