百貨店のおせち商戦が開幕した。おせち市場においては長らく、百貨店がマーケットリーダーを担ってきたが、プレーヤーは増え続けており、市場の競争は激化している。百貨店が今後もおせち市場で成長を続けるためには、新規顧客の開拓が不可欠。独自性の追求が成長の鍵となりそうだ。百貨店のおせちの通販・EC市場のトレンドとしては、前年に続き、EC化率の高まりが予想される。受注の早期化も進んでいる。全体的な消費傾向としては、「節約志向」が高まっている。一方で、百貨店は、「ハレの日」に高単価商品を購入する余裕のある客層も多く抱えている。消費が二極化する中、各社は幅広いニーズに対応できる商品を取りそろえ、おせち商戦を迎えようとしている。各社は、最大9連休となる年末年始を楽しんでもらえるような、バラエティー豊かなおせちを展開しているようだ。(関連記事を2面に掲載)
■EC化率5割超
大丸松坂屋百貨店(本社東京都)は今年度、ECの売り上げを前年度比5.4%増にするという目標を掲げている。目標達成に向けて、「好きな時に好きな場所で24時間購入できる」「『お買い得』である」といった、ECのメリットのPRを、全面的に強化しているという。
大丸松坂屋百貨店の25年度のおせち商戦の売り上げ構成比を見ると、「店頭購入」は32.6%、「電話注文など」は14.8%、「EC」は52.6%だった。
20年の時点では、EC経由の購入が約3割にとどまっていたが、24年には初めて50%を突破した。
大丸松坂屋百貨店が、おせちの発売に先立って開催した発表会では、執行役員・営業本部MDコンテンツ開発第2部長の臼井満氏が登壇し、「重詰めおせちの成長率については踊り場である可能性が高い。戦略の方向性としては、新規市場開拓と、オリジナリティーの追求がポイントになると捉えている」と語った。
大丸松坂屋百貨店のオリジナルおせちの売り上げは右肩上がりで成長を続けているという。売り上げ上位3位のおせちは、(1)「大原千鶴 口福(こうふく)おせち 巳 三段」(税込2万9800円)(2)「吉田類 おつまみ玉手箱 一段」(税込1万7800円)(3)「京都・祇園 京彩宴 『天禄』」(税込1万1880円)─の3品。3品とも同社オリジナル商品だという。「おせち+1(鍋・迎春料理)」商品も好評で、この商品の売り上げは前年度に急伸した。20年比では4倍に成長したという。
おせちに関するメルマガの配信を行うなどして、「パルコカード」利用の顧客に向けたアプローチも行っているそうだ。
■ふるさと納税市場も活況
大丸松坂屋百貨店では、ふるさと納税経由のおせちの売り上げも年々伸長している。参入した24年と比べ、売り上げは3倍に増えているそうだ。伸長の要因は、商品の出品件数を増やしていることだという。今年度はPB商品の出品のさらなる拡大を目指すという。
ふるさと納税のおせちの存在感は、今後もさらに高まっていきそうだ。
■インフルエンサーを起用
同社は肉おせち、おつまみ、オードブルなど”ユニークおせち”を展開している。その一環として、SNSで話題のインフルエンサーを監修者に起用したおせちも販売する。監修者のインフルエンサーからの情報発信を活用し、新規顧客の開拓も狙うという。
■コラボで受注促進
そごう・西武(本社東京都)では、
(続きは、「日本流通産業新聞」 9月18日号で)
【おせち商戦開幕】おせちEC市場の競走は激化/「新規市場開拓」「独自性」に活路(2025年9月18日号)
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