営業職のニーズ低下や人手不足、販売チャネルの多角化など業界を取り巻く環境の変化に対応するため、住設訪販企業が健全な営業活動に取り組む一方、特定商取引法を無視した営業行為を行う「悪徳業者」が依然目立っている。行政処分や消費者相談の増加は、業界全体の信頼性にかかわる問題となっている。負のサイクルを断ち切ろうと、法令順守のもと健全に訪販事業に取り組む企業も多い。顧客対応だけでなく、ルールを守らない住設事業者にも目を配った対応もみられる。
■国センへの相談急増
消費者相談を受け付ける国民生活センターは、今年1月と6月に住設訪販に関する注意喚起を行った。1月15日に注意喚起した内容は分電盤の点検商法に関する内容だ。
国センによると、24年4~11月における分電盤の点検商法に関する相談件数は前年同期比25倍の461件に急増。相談当事者の約8割が70代以上だった。「すぐに交換しなければ漏電して火事になる」と不安をあおり、分電盤の交換工事の契約を取り付ける事例が目立った。被害額の平均は約2万円で、相談は南関東が9割と集中し、今後、全国に広がる可能性があると指摘した。
分電盤の点検は4年おきの法定点検が義務付けられているが、対応するのは電力会社や登録調査機関だ。点検前には、事前に書面をポスト投函するなど告知する。点検時の調査員は「調査員証」を携帯し、法定点検の際は点検後に調査員から工事の契約を提案することはない。
国センは、今年6月にも点検商法による太陽光発電の相談件数が4倍に拡大しているとして注意喚起を行っている。太陽光発電の点検で訪問した際に、高額な契約を勧誘する商法が増えていると指摘した。
実際の相談件数は22年4月~23年3月が154件で、24年4月~25年3月は613件と約4倍に増加したという。相談の分布図は、南関東や近畿で件数が多い傾向にあり、四国や山陽エリアでも目立っている。
■悪質性の高い処分目立つ
本紙は今年1~8月までに住設訪販関連で行政処分を受けた企業を表にまとめた=図1参照。相談内容からは悪質性が見えてくる。
神奈川県は1月10日、住宅リフォーム工事などの訪問販売を行うアストモホーム(本社神奈川県、石塚智也社長)に対して、特定商取引法に基づく24カ月間の業務停止を命じた。同社の代表取締役である石塚智也氏も処分している。県では、24カ月間の業務停止や禁止は過去最長で、アストモホームは過去に処分したサンテック社と主要な人的構成が共通している点も挙げる。
特商法違反に該当した「不実告知」では、「屋根がめくれているのが見えた」「屋根の一番上が壊れている。早く直さないと雨漏りして家がだめになる」などとうそを告げていたという。
また、「判断力不足便乗」の違反も該当。「屋根などが傷んで危ないから」と言って消費者宅を訪問して屋根工事を含めた複数の工事を立て続けに契約した。この消費者は目が見えにくく日常生活に支障があり、アルツハイマー型認知症の診断も受けていたという。
県が依頼した一級建築士が後日行った現地調査では「実際には工事が施工されていないと考えられる。工事が施工されていないと判断する人が多いと推測される」という所見が示された。また、クーリング・オフに応じず返金を受け付けなかったとしている。
東京都が今年3月28日に行政処分を行ったのは、ゴキブリなど害虫駆除を訪問販売するORBITAL PERIOD(オービタルピリオド、本社東京都、吉川孝子社長)と、同じく害虫駆除を訪問販売するサービス(本社東京都、吉川孝子社長)。2社はクーリング・オフを妨害するなどして、特定商取引法に違反する行為があったとして12カ月間の業務停止を命じた。2社の代表を務める吉川孝子氏にも12カ月間の業務禁止の処分を行った。
(続きは、「日本流通産業新聞 9月11日号で)
【『健全性』問われる住設訪販】行政処分や消費者相談が増加/「健全な事業」で負のサイクルから脱却(2025年9月11日号)
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