大手EC・通販企業において主力ブランドとは異なる新規ブランドの展開を強化する動きが目立っている。海産物のECサイト「越前かに職人 甲羅組」を運営する伝食(本社福井県、田辺晃司代表)は、新たに食品を取り扱うECサイト「祖の食庵」を開設し、「楽天市場」で優れた店舗を表彰する「楽天ショップ・オブ・ザ・イヤー(SOY)2024」の「スイーツ・お菓子ジャンル」で大賞を受賞している。ショッピング専門チャンネル「ショップチャンネル」を放送するジュピターショップチャンネル(本社東京都、小川吉宏社長)は今秋、新たに二つのECサイトの運営を開始する。冷凍宅配弁当大手のナッシュ(本社大阪府、田中智也代表)がペットフード市場に参入する動きも出ている。注目企業の最新動向について迫る。
近年、大手企業による別ブランド展開の動きが加速している。背景には既存のブランドでさらに売り上げを伸ばすことが困難になっていることや、主力商品一辺倒になることで仕入れが難しくなったときのリスクを回避することなどが関係していると推測する。
取材を通じて、伝食の田辺晃司代表も、「『甲羅組』の主力商品であるカニは年によって仕入れ価格が大きく変わる。それに左右されないで別できちんと売り上げや収益性を確保できる方法が急務だった」と打ち明ける。
伝食が手がける「祖の食庵」は「有明焼き海苔」「干し芋」「ミックスナッツ」「凍らせて食べるアイス」など幅広いカテゴリーの商品を取り扱う。商品の選定基準は、すでに「楽天市場」で人気でレビューが多く付いている商品を分析して仕入れている。そして商品によっては常時、他社よりも安い価格で販売するのではなく、セール時だけ他社よりも安くなるように調整して、新規顧客獲得を目指している。
集客方法は「甲羅組」の資産と「楽天市場」の広告を最大限活用している。
「『祖の食庵』を立ち上げたとき、『甲羅組』のお客さまにメルマガなどで新ブランドを立ち上げたことを伝えた。それ以降、そこからの流入も一定数ある。『楽天市場』は定期的に複数のショップで買い物をするとポイントをアップするキャンペーンを実施しており、そこで『甲羅組』『祖の食庵』を行き来して商品を購入するお客さまが多いと思っている」(田辺代表)と分析する。
■前期売上75億円超
ハルメクホールディングス(HD)は主力事業の「ハルメク」に加え、カタログ通販事業「ことせ」を展開している。
25年3月期におけることせ事業の売上高は、前期比2%減の75億6700万円だった。決して売れ行きに陰りが見えているわけではなく、「ことせ」を運営するハルメク・アルファの石多哲人社長は「完売により、販売機会の損失が起こったことが影響している」と明かす。
ハルメクHDでは、グループに日本で最多の発行部数を誇る女性雑誌「ハルメク」と、「ことせ」を運営している。
(続きは、「日本流通産業新聞」 7月24日・7月31日合併号で)
【加速する大手企業の別ブランド展開】伝食は新サイトでSOY受賞/ブランドを超えた相互送客が奏功(2025年7月24日・31日合併号)
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