熊本地震から1カ月、通販は/県内企業が営業再開へ/一部サービスは未復旧も受注・発送は開始

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 熊本地震で本社やコールセンター、物流倉庫などが被災した通販企業が一刻も早い復旧に向けて取り組んでいる。再春館製薬所(本社熊本県益城郡)、健康茶や特産品通販の村田園(本社熊本県菊池郡)、通販サイト「くまもと風土」で農産品を販売するコムセンス(本社熊本県熊本市)などは通販を再開した。一部再開できていないサービスがあったり、電話回線や物流倉庫がまだ使用できないケースもあるが、商品の受注や発送を優先的に始めている。全国からの復興支援活動が相次いでいる中、特に熊本県内や九州内の企業による支援が強まっている。

■社員の携帯で顧客対応
 最初の地震で震源地となった益城町に本社がある再春館製薬所は、4月16日に発生した本震で工場の壁が損傷し、コールセンターの棚が倒れた。これらの被害を受け、10日間営業を停止していた。
 コールセンターは以前より営業時間を少し短縮して再開。化粧品「ドモホルンリンクル」は「つくりたての製品を届ける」という方針のもと、商品の在庫を多く持たないようにしているが、5月23日に漢方薬商品も含め、受注、発送、問い合わせ窓口が通常通り再開したとホームページで知らせた。
 ただし、ギフト注文、肌の悩みを相談する窓口の「プリーザー」、コミュニティーサイトなどは現在のところ再開準備中で、準備が整い次第、順次再開していくという。「お客さまが困らないようにすることを第一に、まずは商品の受注、発送を最優先に営業を再開した」(広報)と話している。
 村田園は建物の設備や備品の損傷が大きかったため、敷地内の別の建物に事務所を移した。まだ余震の続く4月19日から損傷した窓ガラスや壁などの片付けを開始し、4月26日に製造を再開、5月9日に発送を再開した。
 健康食品通販のフォーエヴァー(本社熊本県熊本市)は、本社が入居していた建物に倒壊の恐れがあったため、5月中旬に新オフィスに移転した。しかし、回線工事会社の順番待ちで電話とネットがまだつながっていない。
 商品調達には問題が発生していないが、顧客対応の面では社員の携帯電話から顧客に連絡を取り、定期購入の商品を送っている状況だ。
 委託先のコールセンターと倉庫が被災したキューサイ(本社福岡県福岡市)は、熊本のコールセンターの全機能を停止していたが、従業員の出勤状況などに合わせて徐々に営業を再開。現在は勤務時間や架電数を以前より抑えて営業している。
 物流倉庫は一部で冷凍荷物が倒壊して出荷できなくなり、被災した倉庫からはいまだに出荷が再開できていない。別の倉庫からクール便を使って配送対応している。

■チャリティーに同業者が賛同
 コムセンスは16日の本震発生後、取引先の契約農家とヤマト運輸の状況確認に追われた。野菜の定期販売を行っているが、ヤマト運輸の営業再開のめどが立たず、次回出荷予定だった野菜200件分の出荷が止まってしまった。定期顧客に連絡して了承を得た上で「出荷できなかった野菜や果物を避難所に支援物資として運んだ」(吉永安宏社長)と言う。
 4月18日からは「楽天市場」の販促イベント「お買い物マラソン」の参加を予定していた。取引先に迷惑をかけるわけにはいかないという思いで予定通りイベントには参加している。
 現在、業務は落ち着いきを取り戻してきている。しかし、「通販は営業再開できても、県内の宿泊施設はキャンセルが続出して打撃を受けている。宿泊施設からの注文が止まれば生産者にも影響する。熊本は農業が基幹産業なので、全国に向けてもっと農産品を販売していきたい」(吉永社長)と意気込んでいる。
 この思いのもと、4月14日から注文1個につき10円を熊本県に寄付する「くまもと風土がんばります宣言!」と題したチャリティー活動を開始した。

(続きは、「日本流通産業新聞」5月29日号で)

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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