【通販・ECの生成AI活用拡大】広告の効果1.5倍の事例も/「マーケ」「対話」「ささげ」でも応用(2025年3月6日号)

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 日本国内の通販・EC事業者においても、生成AIの活用が広がってきているようだ。通販EC事業者を対象にした、本紙の24年12月の調査では、約6割が「AIを利用している」と回答した。生成AIの活用により「広告パフォーマンスが1.5倍に向上した」「流通総額が77%増加した」といったECの事例も出てきているようだ。とはいえ、日本で生成AIを利用する個人の割合は9.1%にとどまっており、中国の56.3%、米国の46.3%に遠く及ばない。生成AI先進国に学ぶ必要もありそうだ。

■中国は熱狂

 中国の生成AI「DeepSeek(ディープシーク)」の存在が世界を賑わせている。高性能、低コストで、オープンソースという特徴を持つ。
 中国当局の支援も追い風となり、中国企業で導入が相次ぐなど、急速に普及しているようだ。
 中国の大手検索エンジン百度(バイドゥ)は先月、ディープシークを主力検索サービスとして導入すると発表した。テンセントでは約13億人が利用するSNSアプリ「WeChat(ウィーチャット)」で、試験運用を行うとしている。 
 一方、中国EC大手アリババは、ディープシークを上回る性能を持つ生成AI「通義千問」の新モデルを開発したという。
 アリババの生成AIはすでに自社プラットフォームに導入され、EC事業での活用が進んでいる。24年の中国EC最大のセールイベント「ダブルイレブン(W11)ショッピングフェスティバル」では、出店者向けにAIを活用したマーケティング素材の生成ツールを提供したという。
 同セール期間中にツールを利用した企業は累計400万社にのぼった。広告画像・動画・テキストの自動生成に活用し、マーケティング費用の削減につながったそうだ。生成AIを活用し、消費者の嗜好(しこう)を分析。マーケティングを最適化することにも使われたという。同期間中、80万社以上の出店者が、延べ200万回超の分析を実施したとしている。
 生成AIを活用した「デジタルヒューマン」によるライブコマース市場も活況だ。24年のW11のライブコマースでも、「デジタルヒューマン」を使ったライブを実施する企業が目立った。
 中国EC市場分析ツール「Nint China(ニントチャイナ)データソリューション」を提供する、Nint(ニント、本社東京都)でも、生成AIは日常的に活用しているという。
 中国ECに詳しい、Nint上海・経営戦略担当を務める堀井良威氏は「中国では昔からEC上の問い合わせ対応はチャットによるコミュニケーションが主流。人的リソースの削減や購買率向上を図るため、今後より一層精度の高い生成AIが活用されていくだろう」とみている。中国における生成AIの活用は今後さらに勢いが増すと考えられるという。
 さらに堀井氏は、中国語の商品説明文章の生成などは、日本企業の中国越境ECのサポートにも大きく役立つとみているそうだ。
 中国市場に限らず、海外進出時に生成AIは心強い味方になりそうだ。


■生成AI経由のトラ/フィックは1950%増

 「ChatGPT」の登場を皮切りに、生成AI時代が訪れた。米国発のものだけでも、マイクロソフトの「Copilot(コパイロット)」、グーグルの「Gemini(ジェミニ)」、アンソロピックの「Claude(クロード)」、ミッドジャーニーが開発した「MidJourney(ミッドジャーニー)」など、さまざまな生成AIサービスが群雄割拠している。
 生成AIブーム発祥の地と言える米国でももちろん、生成AIのECへの活用が進んでいる。
 Adobe(アドビ)によると、

(続きは、「日本流通産業新聞 3月6日号で)

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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