中小通販のアプリ開発広がる/独自のサービスでダウンロード増加

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ダウンロード数が12万件に達した、ベイクの特注ケーキを受け付けるアプリ「ピクトケーキ」

ダウンロード数が12万件に達した、ベイクの特注ケーキを受け付けるアプリ「ピクトケーキ」

中小のネット通販会社で、スマートフォンやタブレット端末向けの通販アプリを開設する動きが広まっている。ケーキのネット通販を展開するBAKE(ベイク、本社東京都、長沼真太郎社長)は、アプリのダウンロード数が12万件を突破し、アプリ経由の販売数が全体の8割を占めている。複数の専門店を運営するネット通販事業者のシー・コネクト(本社東京都、嶽本泰伸社長)は、ニッチな商品を取り扱うことでファンを獲得している。アプリは数回のタップで簡単に注文まで行える利点があり、リピート顧客の育成が期待されている。特徴ある独自のアプリで、ダウンロード数を伸ばしている中小事業者も表れている。

複数の機能を搭載
 アップアニー(本社米国サンフランシスコ、バートランド・シュミットCEO)が2月12日に発表した「モバイルアプリ市場予測レポート」によると、16年のモバイル用アプリの世界市場は前年比24%増の509億ドル(約5兆7500億円)に達し、20年までに1000億ドル(11兆3000億円)に成長すると予測している。アプリを経由した通販の利用時間は、前年に比べて1・6倍に拡大したとしている。
 アプリは通販機能だけでなく、位置情報との連携やプッシュ通知によるキャンペーン告知、自社メディアの運営など複数の機能を搭載したものも増えている。アプリ上でシミュレーションして、商品のオーダーメードを受け付ける事業者もある。
 ケーキを販売するベイクは1月末までに、特注ケーキを受け付けるアプリ「ピクトケーキ」のダウンロード数が12万件に達した。スマートフォンなどから撮影した写真を送信すると、写真を可食インクで再現したケーキがオーダーできるサービスが人気だ。
 デコレーションケーキは年間7万台販売しており、アプリからの注文が6万件を占めるようになった。「ピクトケーキ」はブラウザー上でも注文できるが、写真データをパソコンに転送せずそのまま送信できる手軽さで、アプリ経由の注文が増えているという。

SNSでアプリ周知も
 知名度が高くない事業者では、アプリを開設してもダウンロードしてもらうことが難しい。広告費用に制限がある中小では、幅広い層にダウンロードしてもらうのではなく、特定の利用者に訴求した取り組みが目立つ。
 インクなど商品を絞った専門通販サイトを運営するシー・コネクトは1月、女性をターゲットにした布ナプキン専門の「nunona(ヌノナ)」のアプリを開設した。布ナプキンに特化し、昼用や夜用といった用途に合わせて495品目を取り扱う。
 アプリ開設記念としてポイント10倍キャンペーンを実施し、通販サイトの利用者にダウンロードを促した。通販サイトと比較するとアプリ経由の購入単価は約40%高く、費用対効果で想定以上の結果があったという。アプリ限定のセット商品の投入も予定している。
 今後はアプリ内のコンテンツを充実させる計画で、SNSとも連動して女性の悩みを相談し合える場を目指している。アプリを通じて、ファンの囲い込みを狙っていく。
 口コミが広がってダウンロードにつなげているケースもある。
 ベイクのアプリ「ピクトケーキ」の利用者は、インスタグラムやフェイスブックにオーダーメードケーキの写真を投稿する人が多い。オリジナル商品の魅力と、アプリの使い勝手の良さがSNSで広がり、ダウンロードに結び付いている。
 実店舗でアプリのダウンロードを伸ばしている事業者もある。
 スキンケア化粧品をネットと店舗で販売しているローレル(本社北海道、今井浩恵社長)は、15年12月に開設したアプリ「shiro(シロ)」のダウンロード数が、1月末までに約9500件に達した。ネット広告での宣伝は行わず、全国20店の実店舗で店員が「シロ」のサービスを顧客に直接伝えている。通販に加え、会員の購入履歴や店舗への誘導など、OOの機能を充実させた。多いときは、1日に約800件のダウンロードがあるという。

続きは「日本流通産業新聞」2月25日号で)

布ナプキンに特化したシー・コネクトの「nunona(ヌノナ)」

布ナプキンに特化したシー・コネクトの「nunona(ヌノナ)」

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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