【改正特商法・クロスセル規制】 単品通販の多くが未対応か/「”勧誘”ではない」と主張する大手も(2023年7月6日号)

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定期購入のアップセルは電話勧誘販売に

定期購入のアップセルは電話勧誘販売に

 6月1日に、改正特商法の政省令が改正され、電話勧誘販売の対象範囲が拡大した。6月1日以降は、通販会社が、インフォマーシャルや新聞広告、ウェブ広告などを見て電話をかけてきた顧客に対して、別商品や定期購入のアップセル・クロスセルを行うと、「電話勧誘販売」に該当すると判断され、通販よりも厳しい規制を適用されることになった。電話でのクロスセルを行ってきた通販企業は、広告のクリエーティブを変更するなどして規制を免れるか、書面交付などを行って、「電話勧誘販売」の厳しい規制に対応する必要がある。だが、改正法施行からすでに1カ月以上がたつが、多くの通販企業が、新たな規制に完全には対応できていないようだ。「6月以降、(電話勧誘販売の規制で求められる)クーリング・オフの案内をするようにした」などと対応策を話す大手健康食品通販企業もあった。一方で、「当社はお客さまにヒアリングを行って商品を行うもので、勧誘を行うわけではない。電話勧誘販売には当たらないと考え、基本的には対応しない方針だ」とする大手通販企業もあった。

■「特商法Q&A」を更新

 6月1日に施行された改正特商法の政省令では例えば、ウェブやテレビ・ラジオ広告、新聞広告などを見て電話をかけてきた顧客に対して、クロスセルやアップセルを行う行為が「電話勧誘販売」に該当すると規定している。「電話勧誘販売」の場合、「契約書面の交付義務」や「再勧誘の禁止」など、「通信販売」にはない、義務・禁止行為が多数規定されている。「クーリング・オフ」を受け付ける必要もある。違反すれば、行政処分や刑事罰の対象となる可能性がある。
 消費者庁では、「Aという商品について、ウェブやインフォマーシャル、新聞で広告する際に、『Bという商品もお薦めする』旨が広告内に書かれていないにもかかわらず、電話でBの商品を提案した場合、電話勧誘販売に当たる。Aが定期購入の『お試し商品』で、Bが本商品の定期契約でも、それに該当する」(取引対策課)という見解を示している。
 広告の中に、本商品とは別に、アップセル・クロスセルする予定の商品について記載すれば、従来通り「通信販売」としての規制のみを受ける形になる。ただし、広告の注記に例えば、「電話で定期購入の案内を行う場合があります」と記載するだけでは、不十分だとしている。
 消費者庁が開設しているサイト「特定商取引法ガイド」の、電話勧誘販売に関するQ&Aでは、「『電話で他の商品の案内を行う場合があります』といった注記があるのみで、通信販売の広告に必要な事項(価格や解除に関する事項など)の表示がない場合は、消費者からの電話は、当該定期購入や他の商品に係る契約の申し込みであるとは考えにくく、(中略)事業者からの勧誘があるものと考えられますので、電話勧誘販売の規制対象になります」と記載している。
 クロスセル・アップセルを行う通販の場合、広告には、単品で販売する本商品の価格や契約事項のほかに、アップセルする商品の商品名や価格、契約条件などを記載する必要があるとしている。
 事業者から消費者に、アウトバウンドコールを行ってクロスセルやアップセルの提案をする行為は、これまでも「電話勧誘販売」に当たると規定されていた。


■「対応済」「対応しない」二極化

 電話でのクロスセルやアップセルが、「電話勧誘販売」と判断される場合、少なくとも(1)事業者名やオペレーターの氏名を明示する(2)クーリング・オフの適用対象であると告げる(3)契約書面を交付する(4)断られた場合に一定期間再勧誘をしない─の4点に対応する必要がある。

(続きは、「日本流通産業新聞」7月6日号で)

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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