〈本人「注文していない」〉 【通販事業者】認知症客への対応苦慮/家族は発送中止や返金を要請 (2022年9月22日号)

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高齢者からは電話注文が中心だが、その段階で認知症か否かの判断はできない(写真と本文は関係ありません)

高齢者からは電話注文が中心だが、その段階で認知症か否かの判断はできない(写真と本文は関係ありません)

 通販事業者が認知症顧客への対応に苦慮している。顧客は商品を注文しているにもかかわらず、後日になって「注文していない」と主張したり、顧客の家族からは商品の発送中止や、解約・返品・返金の要請が寄せられたりしているからだ。一部通販事業者によると、認知症と思われる顧客からの受注は、年々増加傾向にあると証言している。認知症顧客への対応は個々の通販事業者が、ケースバイケースで対応しているのがほとんどで、通販業界として共通した対応ノウハウが表面化してこないことも、通販事業者を悩ませる一因となっている。

■一部特殊事例も/パターン類型化

 認知症顧客による通販事業者とのトラブル事例は、ほぼ類型化されている。一般的に多いのが、本人は注文しているのに、商品を発送すると「身に覚えがない」と主張するケース。さらに、認知症顧客の家族から、顧客は「認知症を患っているのだから、商品やカタログ・DMは今後送らないでほしい」という要請が寄せられることだ。
 このほか最近の事例として増えているのは、「定期購入を申し込まれたお客さまに二回目の商品を送った際、『こんなに申し込んでいない』と言われた」(通販専業A社)ケースや、「消費生活センターから、『〇〇さんへの商品発送を止めてほしい』といった連絡が目立つ」(通販専業B社)などだ。
 消費生活センターから通販事業者へ要請が増えているのも、恐らく顧客の家族から消費生活センターへ連絡が寄せられてセンターが対応しているのだと思われる。
 このほか、定期購入顧客の家族から「大量の健康食品が送られて残っているので、すべて返金対応してほしい」といった要請や、顧客から「自分はC社に申し込んでいるのに、D社から商品が送られてきた」と主張されたりすることもある。
 その影響が一部返品商品にも表れており、「同業他社の商品が当社に返品されてきた」といった事例も寄せられている。
 ただ、返品への対応も難しいところがある。公益社団法人日本通信販売協会(JADMA)によると、「過去にさかのぼってまで、契約解除に伴う返金要請は契約が成立しているし、健康食品や食品といった商品は通販事業者側も返品には応じかねる」(事務局)と説明する。
 このほか、未払いの認知症顧客に対し督促状を送付したところ、それを見た家族から解約・返金要請があったケースも見受けられた。


■プライドに配慮した対応が必要

 認知症顧客に対して、通販事業者側は、どのように対応しているのだろうか。最も対応しやすいのは、顧客が成年後見人や補佐人・補助人を選任している場合だ。成年後見人は顧客本人の法定代理人となり得るため、成年後見人との協議により対応を進めることが可能になる。

(続きは、「日本流通産業新聞」9月22日号で)

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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