改正消契法が成立/三つの取消権を新たに追加(2022年6月2日・9日合併号)

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 消費者契約法と消費者裁判手続特例法の改正案が5月25日、参議院本会議で可決、成立した。消費者契約法の改正案では、「勧誘をすることを告げずに、退去困難な場所へ同行し勧誘」など、三つの取消権が追加された。サブスクなどの解約料の算定根拠の概要の記載が努力義務となる。公布から1年以内に施行となる見通しだ。
 消費者契約法の改正案は、消費者の取消権を3項目追加する内容となっている。(1)勧誘をすることを告げずに、退去困難な場所へ同行し勧誘する(2)威迫する言動を交え、相談の連絡を妨害する(3)契約前に目的物の現状を変更し、原状回復を著しく困難にする─といった行為があった場合、取消権の対象となる。
 (1)の「退去困難な場所」については、遠方など帰宅困難な場所などが該当するだけでなく、「足が不自由な人に対し、階段しか移動手段がない」などの場合にも適用される可能性がある。
 (3)のケースでは例えば、契約の際に「実際に商品に触れるため」など、購入予定の商品パッケージを開封することなどが該当する。
 国会では、「取消となる条件が限定的すぎるのでは」という声も上っていた。今後条件の緩和について、議論の必要があるのではという声も上っていた。


■サブスクの解約も

 「解約料の説明」も、努力義務として追加された。消費者や適格消費者団体に対し、解約料の算定根拠について説明することが、事業者の努力義務となる。
 「解除権行使に必要な情報提供」も、努力義務に追加された。サブスクリプションサービスなどについてトラブルが増加する中、解約手続きをしやすくする狙いもありそうだ。
 消費者裁判手続特例法の改正案では、訴訟の対象範囲が拡大される。「対象となる被告」を追加。従来の事業者に加え、悪質商法に関与した、事業監督者、被用者などの個人も対象とする。「慰謝料」も、消費者裁判手続き特例法の「対象となる損害」に追加される。


■高齢者と若年層を保護

 可決に当たっては、付帯決議を行っている。付帯決議では、「法改正後、直ちに、諸外国の法整備の動向を踏まえ、同法の消費者法令における役割を多角的な見地から見直した上で、個々の消費者の多様な事情に応じて消費者契約の申し込みまたは、その承諾の意思表示を取り消すことができる制度の創設、損害賠償請求の導入、契約締結時以外への適用場面等既存の枠組みに捉われない抜本かつ網羅的なルール設定の在り方について検討を開始し、必要な措置を講ずること」などとしている。
 「検討の際には、高齢者の消費者保護の重要性、成年年齢引下げにおける若年者の消費者被害の状況などを踏まえ、悪質商法による被害を実効的に予防・救済するとの観点を十分に踏まえること」なども求めている。
 消費者が合理的な判断をすることができない事情を不当に利用して、事業者が消費者を勧誘し契約を締結させた場合における消費者の取消権(いわゆるつけ込み型不当勧誘取消権)に関しても、創設を検討することを求めている。
 計14の項目を付帯決議に盛り込んでいる。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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