グループ全体で20種類以上のファッションブランドを展開しているベイクルーズ(本社東京都、窪田祐社長)。1977年の創業以来、店舗を中心に販売してきたが、近年は市場動向の変化を受けネット通販にも力を注いでいる。14年8月期のEC売上高は前期比46%増の120億円に拡大した。アパレルECで業界屈指の売り上げを誇る同社は今後、どのように事業展開するのか。EC統括・嶋田純執行役員にEC事業の現状と15年の戦略を聞いた。
スマホ売上高が約5割
─EC事業の概要について教えてください。
「『ジャーナルスタンダード』など、ベイクルーズグループが販売している20種類以上のアパレルブランドを取り扱っています。直販サイト『スタイルクルーズ』を運営しているほか、ECモールは『ゾゾタウン』『マガシーク』『アイルミネ』『マルイウェブチャネル』『セレクトスクエア』に出店中です」
「当社は1977年の創業以来、アパレルを実店舗で販売しています。インターネットショッピングの拡大を受けて05年にECを開始しました。12年にはブランドごとに分かれていたEC事業を統合し、グループのEC事業を統合的に手掛ける『EC統括』が発足しました。当初から通販システムを独自に構築するなどEC事業の大半は内製化しています。EC事業の人員は約60人です」
─直近のEC売上高と増収率を教えてください。
「14年8月期のEC売上高は前期比46%増の約120億円でした。自社サイトの売り上げが41億7000万円、モール経由は78億3000万円という内訳です。EC化率は全ブランドの平均で約15%でした。近年はスマートフォン経由の受注が急速に増えています。前期は売り上げの約50%、アクセス数の約60%を占めました。今期はさらにスマートフォンの比率が高まっています」
─自社サイトへの主な集客方法は。
「オーガニック検索とリターゲティング広告が中心です。当社は実店舗を展開しているため、ブランドを認知している消費者がECサイトを利用するケースが比較的多いのが特徴です。今後はブランドの世界観をまだ体感していただけていない、新たな層を獲得するためのプロモーションも強化していきます」
─14年に特に力を入れて取り組んだ施策は何ですか。
「昨年特に力を入れたのは、画像を使ったコーディネートを増やす取り組みです。購買データを分析した結果、ECサイトの商品ページにコーディネートの写真を掲載すると、商品の売り上げが増える傾向にあることが分かりました。店頭のスタッフが着こなしの提案を行うことで顧客の購買意欲を高めるのと同様に、ECサイトにおいても着こなしの提案は非常に有効です」
─コーディネートの写真にはファッションモデルを起用しているのですか。
「モデルを務めるのは原則、当社のスタッフです。撮影もスタッフが行っています。ブランドと商品について熟知している社員がモデルを務めることで、より良い着こなしの提案を行えると判断しました。また、モデルにスタッフを起用することで、消費者が親近感を抱く効果も期待しています。EC事業のスタッフの中には実店舗の販売経験者もいるため、ブランドらしさを表現する着こなしを提案することに慣れているという強みもある。写真撮影を含めて日常業務の一環として行っています」
─ECの在庫管理や商品撮影、採寸、原稿作成の体制について教えてください。
「都内にEC専用倉庫を構え、『ゾゾタウン』を除くモールと自社サイトの在庫を保管しています。13年11月には『ゾゾタウン』以外の在庫データの統合を行いました。ECの組織を統合したことと、在庫の管理体制を変えたことで、EC事業を拡大するための下地が整いました。撮影や採寸、原稿作成は自社で行っています」
(続きは日本ネット経済新聞 1月29日号で)
〈EC売上高120億円に拡大〉ベイクルーズ EC統括 嶋田純執行役員/着こなしの提案で需要を喚起
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