給湯器、太陽光発電、蓄電池など省エネ商材を、「ゼロ円」「初期費用無料」で設置するというサービスが増えている。メーカーや電力・ガス会社のほか、販売や通信の事業者が手掛けており、中にはバリエーションを増やし、ブランド展開することで設置数を伸ばす企業もある。こうしたサービスはウェブ集客がメインとなり、対面営業を行うダイレクトセールスよりも間口は広い。省エネ商材の訪販会社にとっては新たな競合相手になっている。
■ウェブ完結に強み
現在、省エネ商材の設置を「ゼロ円」「初期費用無料」として展開している各社のサービスは別表の通りだ。
これらのサービスはいずれも設置費用が無料であり、設置後は、何かしらの負担がユーザーに生じる。負担額は各社が提供しているプランで異なり、金額の差もある。「設置する代わりに」という何かしらの対価を支払う形だ。
サービス展開の大半はウェブ完結型で、まずは必要事項を入力するだけの問い合わせフォームが入り口となる。省エネ商材を訪販する企業と対照的に、ウェブを入り口に簡単な項目を入力するだけの利便性が強みだ。
問い合わせフォームから入ってきたユーザーが仮に、契約に至らなくても顧客情報がストックされるため、今後の見込み客にもなる。
分かりやすいランディングページ(LP)を用意して、ウェブやSNS広告で宣伝するだけで、人的リソースを必要とせずに新規顧客を獲得している。
■サービス拡張の一環
こうしたサービスは、省エネ商材に関連する事業を手掛ける会社もあれば、異業種が参入した例もある。母体が異業種でも、グループ企業がエネルギー関連の事業をしているケースが目立ち、KDDIやJCOMなどはこれらに該当している。
電力・ガス会社などは、省エネ商材などをグループ会社が展開している場合が多く、サービスや事業の拡張を目的に手掛けている。電気やガスの販売とゼロ円設置サービスは相性が良く、クロスセルしやすいメニューになっている。
大手の電力やガス会社は、グループ会社を通じて、電気やガスが可視化できるアプリやツール、ECを含むウェブ関連事業も展開する。このためウェブで集客するゼロ円設置サービスとの親和性は高い。電力やガス会社による展開が多いのはこうした背景もある。
■設置数増の事例も
無料をうたった設置サービスをフックに、太陽光発電や蓄電池の設置数が増えている事例もある。
TEPCOホームテック(本社東京都)は今年4月、住宅用の太陽光発電の設置件数が1万2000件を突破したと発表した。単独で省エネ商材の販売も手掛けているが、同社が2018年7月から提供するゼロ円設置サービス「エネカリ」が伸びているほか、東京都の太陽光発電の設置義務化など外的要因も追い風となった。
住設メーカーLIXILと東京電力エナジーパートナー(本社東京都)の合弁会社であるLIXIL TEPCOスマートパートナーズ(本社東京都、柏木秀社長)が展開する太陽光発電を実質ゼロ円で設置できるサービス「建て得」の累計受注棟数が今年3月、3万棟を突破した。
同社では18年1月から「建て得バリュー」というサービスを開始し、「建て得スマイル」「建て得ライフ」「建て得でんち」「建て得リフォーム」などバリエーションを増やして棟数を増やしてきた。
提供エリアをあえて絞って展開するのはケーブルテレビ事業を展開するJCOMだ。
(続きは、「日本流通産業新聞」 11月13日号で)
【省エネ商材のゼロ円設置】電力や通信系の参入続く/「間口の拡大」で市場底上げ(2025年11月13日号)
記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。


