【中国越境EC キリン堂の挑戦】<連載2> 初めての「独身の日」に1.8億円販売

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スタッフ一丸となり「独身の日セール」を盛り上げた

スタッフ一丸となり「独身の日セール」を盛り上げた

 ドラッグストアチェーンのキリン堂は14年3月、越境ECモール「天猫国際(Tモールグローバル)」に出店した。出店時から「勝負の日」と見据えていたのが、中国EC市場が1年で最も盛り上がる11月11日の「独身の日」だった。新事業開発部・通販ネットビジネス部長の伊藤雄喜氏はビッグイベントを前に、大小さまざまな予期せぬ壁にぶつかった。その壁を情熱と勢いで乗り越えることにより、初めての「独身の日セール」で1億8000万円を売り上げた。

新たな流行を作る

 「天猫国際」に出店したときから「独身の日セール」で何を販売するかを考えながら店舗を運営していました。「どんな商品をセールの目玉に持っていけばいいのか」「価格はいくらに設定した方がいいのか」などを探っていたのです。
 出店前からの狙いでもありましたが、中国のリアル店舗が取り扱っている日本製品ではなく、まだ中国に上陸していない商品に商機があると考えていました。私たちが中国市場に新たな流行を作りたいと考えたのです。
 例えばシャンプーでは、ジャパン ゲートウェイさまの「レヴール」を重点商品と位置付けました。なぜ、「レヴール」を選んだのかというと、中国にはまだ「ノンシリコンシャンプー」が根付いていなかったからです。逆にいうと私たちがノンシリコンというシャンプー文化を広めることができれば、大きな販売チャンスになるのではと思いました。
 もちろん日本での販売実績があったことや、有名タレントを起用したテレビCMなどを放映した実績があったことも、売れる要素になると考えました。


保税倉庫に悪戦苦闘

 出店時から「レヴール」シリーズをそろえ、その中でも中国市場ではどの商品の人気が出るかを見極めていました。最も売れ行きの良い商品の販売数をさらに伸ばし、さらなるヒット商品にするために、価格設定にもこだわりました。「独身の日」前に販売実績を作ることができれば、さらに売り上げを伸ばすことができるからです。セールの売りとなる商品を作り、いざ勝負の日に向けて準備を進めました。
 商品の物流においては、14年9月からアリババが設けている、保税区の倉庫を利用できるようになりました。保税倉庫を利用できれば、中国のお客さまの手元に商品を迅速に届けられますし、当社としては配送コストを抑えることもできます。
 ただ、社内には「中国の倉庫に商品を持って行って大丈夫なのか」と不安視する声もありました。私は不安を払拭(ふっしょく)するために、中国に飛び、直接自分の目で倉庫を確認し、社内にレポートしました。
 社内の了解を得ることができ、保税倉庫を利用できるようになった後もヒヤッとすることがありました。保税倉庫に入れる商品の出荷が予定よりも遅れてしまったのです。倉庫の担当者からは「期日通りに入庫できなければ受け付けない」と言われ、冷や汗をかきましたが、何とか間に合わせることができました。
 保税倉庫にはまず、「レヴール」を1万本くらい持っていきました。「天猫国際」の共同購入サイトに「レヴール」を掲載すると、1カ月間ぐらいで一気に売れました。売れたのは良かったのですが、「天猫国際」には商品を販売する1カ月前までに在庫を倉庫に納品しておかないと販売できないという「1カ月ルール」というのがあったのです。
 「独身の日」の販売に間に合わせるためには10月初頭には商品を用意しなければなりませんでしたが、在庫をかき集めて何とか間に合わせることができました。
 「独身の日」前に保税倉庫とのやり取りを経験できたことが良かったと思います。

(続きは「日本流通産業新聞」3月10日号で)

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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