【ディーエイチシー 高谷成夫会長】 <今年4月に代表取締役会長・CEOに就任> 事業を成長軌道に戻し、存在感示すよう邁進する(2023年6月1日号)

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 化粧品・健康食品の通販業界での豊富な経験と実績が買われ、ディーエイチシー(DHC)の経営トップに就任してから約50日、高谷成夫代表取締役会長・CEOが本紙のインタビューに応じた。今、改めて感じるDHCの強み、代表取締役3人それぞれの役割、オリックスとのシナジーなどについて話を聞いた。   

■顧客志向のDNA/優れた社員が体現

 ─以前のDHCは基本的に取材を受けませんでした。今後はこれを変えていくのですか。
 社会的な責任を負う企業として、情報公開に限らず、業界発展への貢献も含め、より社会に開かれた透明性の高い会社にしていきます。団体は粧工会(日本化粧品工業会)には既に加入済みで、現在はJADMA(日本通信販売協会)への加入手続きを進めています。
 ─同業企業の経営者でした。DHCをどう見ていましたか。
 化粧品、健康食品の通販業界を中心にキャリアを積んできましたので、そこでトップクラスのプレゼンス(存在感)を持つ会社として、常に意識する存在でした。
 ─どんな部分を意識したのですか。
 通販化粧品が生まれた1970年から80年代は、戦後高度成長を経て日本社会が変革期に差しかかった時代でした。環境問題が社会問題化し、同時に市民活動も盛んとなり、社会や市民と企業との関係性が問われ始めた時代で、国内化粧品市場も同様に大きな変革期を迎えました。再販制度に守られた制度品メーカーによるチェーンストア・百貨店・訪問販売が主流だったモデルが揺らぎ、同時に化粧品による皮膚トラブルも社会問題化しました。
 そのような変革期に、従来のカウンセリング販売中心のビジネスへのアンチテーゼとしてセルフ販売型の通販化粧品が生まれ、また、広い意味での環境への意識の高まりも相まって、化粧品における「安心・安全」という価値がクローズアップされました。
 そんな中、ファンケルは無添加、オルビスはオイルフリー、一方、DHCは天然由来成分であるオリーブバージンオイルで、今のオーガニック化粧品に代表される自然派化粧品のはしりとして登場しました。それぞれの特徴は異なるものの、時代のニーズを捉えて実現しようとしたことは近いものがあると思っていました。
 ─今、改めてDHCの強みはどこにあると思いますか。
 ひとつ挙げるとすればその時代から脈々と続くDNAです。お客さま志向の文化と言える姿勢こそがこのDNAです。その文化を体現する非常にブランドロイヤリティーの高い優れた社員によって、今なおこの会社の根底に流れています。
 ─一方で、補いたい部分はありますか。
 その企業文化とも言えるこの顧客志向が、意識に反して実態としては少し弱っていることです。本来強みであった顧客のニーズをいち早く実現する独自性や、徹底した品質へのこだわり、安心安全への取り組みといった本来の強みに課題が見受けられます。
 DHCは創業者のオーナーシップのもと、トップダウンの意思決定と組織運営が長年行われてきました。これは創業者の創造性を実現するスピード感としては強みでしたが、(創業者が)退かれた今、社員自らが、組織的にそれを実現していかなければなりません。自分たちで目的を考え、答えを出していく必要があります。縦組織の上位下達から横連携での情報共有やボトムアップの仕組みを入れながら、改めて強みを取り戻す。
 組織改革とはまさに意識改革です。全社的な意識改革を進めていくことが、この弱みを補う第一歩であります。
 ─社員の意識改革は難しいと思います。
 簡単に変われるものではありません。仕組みを変えて、整えることから始めます。英国元首相のサッチャーの「考えは言葉となり、言葉は行動となり、行動は習慣となり、習慣は人格となり、人格は運命となる」という言葉がありますが、会社も同じです。自らが考え行動するための仕組みを徹底して運用する中で、意識も行動も変えていけると思っています。
 その一環として「プロジェクトブライト」(新体制構築プロジェクトの名称)を既に推進しています。まさに会社と自分たち自身を「ブライト=磨き込む」ことを、いくつかの分科会の中で仕組み作りや、その整備を行っています。


■卸・流通は伸長も/通販と店は厳しく

 ─宮崎緑氏、小高弘行氏と代表取締役3人制を敷いています。それぞれの役割を教えてください。
 社長の宮崎はCOOとして業務執行の最高責任者としての役割を担っています。長くDHCで歩み、組織や人材を掌握し、事業を最も理解する彼女が意思決定しながら事業を推進しています。
 私はCEOとして事業の全体構想や戦略を構築しリードしていく役割となります。
 オリックスから来ている副社長の小高は、社長の宮崎を業務執行の面から支えるとともに、多くのオリックスの投資案件を責任者として取り組んできた経験を生かしながら、社内外の重要なステークホルダーとの関係構築でも重要な役割を担ってくれています。
 ─オリックスとはどんなシナジーがありますか。
 オリックスが力を入れているヘルスケア領域には大きく「医療」「予防」「未病」の3つの分野があり、それぞれに既に多くの投資を実行しています。その「未病」領域における重要な戦略企業としてDHCの存在があります。ヘルスケアビジネスという大きな構想においてもオリックスグループとのシナジーを進めていきます。
 ─売り上げが初めて1000億円に達したのが05年。その後15期連続でこの大台を維持してきましたが、直近3年は1000億円割れが続いています。再び伸長するためにはなにが必要でしょうか。
 まずカテゴリーで見ると、健康食品分野は大きく落ち込んでいません。さきほど話した強みと弱みの話にあてはめれば、健康食品は強みの分野です。ナンバーワンブランドとしての強みを生かした戦略を仕掛けていきます。しかし化粧品はここ数年、苦戦が続いています。ここは再生のための戦略が必要だと考えています。
 チャネル別では、卸・流通は昨年対比でも伸びています。健康食品のシェアでいえば市場の30%を取っているので、ここもいかに自らの強みを強化するかがポイントです。一方で通販・直営店舗の業態は厳しく、こちらも再生が必要です。
 ─ECなどネット戦略については。
 化粧品通販が産み落とされた変革期にまさにその市場の成長とともに伸びた会社が、この産業革命をも超えるIT革命の時代にデジタルシフトの波に遅れてしまっている実態は素直に反省すべきです。
 しかし、オンライン一辺倒にすべきだとも考えていません。お客さまに最高の体験価値を提供するためにわれわれは何ができるのか、その答えが戦略であるべきです。


■お客さまの支援に/責任の重さ感じる

 ─大型で影響力のある新製品がこのところない気がしますが。
 新製品はもちろん必要ですが、優良顧客が支えている商品を数多く持っている当社においては、まずその強みをさらに強化していくほうが優先順位としては上だと思います。
 ただし、事業の本質は、顧客の便益を実現するためにリスクをとって未知に挑むことだとすれば、新商品や新サービスは自らが信じる新たな価値を世に問うことであり、自分たちの存在意義そのものだと思っています。
 だからこそ、簡単には生みだせるものではなく、またイノベーティブな商品やサービスであればあるほど周囲の多くの反対があります。
 それを振り切ってでも進めるべき時があるとすれば、経営者に与えられる意思決定という権限は、すべてこの時のためにあるとさえ思っています。その意思決定をするために、必要なことを今進めています。
 ─株式上場の計画はあるのですか。
 もちろん株主の判断ではありますが、それは結果のひとつの形であって、現段階での目的ではありません。私たちはまずしっかりと事業を成長軌道に戻し、業界の中でプレゼンス(存在感)のある会社にしていくよう邁進していきます。これだけの数のお客さまのご支援があり、大きな売り上げを持つ会社です。(私の)責任も重大だと感じています。
 ─少し前の話になりますが、前会長が会社のサイトに掲載した文が物議を醸しました。個人的な考えを、会社やブランドのメッセージと受け取った人もいるかと思います。この誤解を取り払う考えはありますか。
 これからの私たちの取り組みの中でお伝えしていくしかないと思っています。
 個人の考え、信条、思想に対して、私がコメントする立場にありません。ただし、個人の考えが会社のものとして伝わってしまったことは反省すべきだと思います。社会的な責任を負う会社として、あるべき姿をこれからの事業運営を通して、ご理解いただくことが大事だと思っています。


<プロフィール>
たかたに・しげお氏
 88年にポーラ化粧品本舗入社、04年にオルビス社長に就任。09年にポーラ・オルビスホールディングス取締役、12年ポーラ取締役に就任。16年にアイスタイル執行役員、アイメイカーズ社長。17年にライザップ取締役マーケティング本部長・プロダクト事業本部長兼健康コーポレーション取締役社長、エンジェリーベ社長のほか、数多くの企業の経営に携わる。
 23年4月にDHC代表取締役会長CEOに就任。1964年6月生まれ、58歳。

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