【全日本トラック協会 企画部 吉田将一次長】 <2030年には「35%」運べないおそれ> 「『送料無料』じゃありません」(2023年3月30日号)

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 24年4月、トラックドライバーの労働時間が規制され、時間外労働の上限が年間960時間となる。国土交通省などが開催している「持続可能な物流の実現に向けた検討会」の資料によると、何も対策を行わなかった場合、30年には営業用トラックの輸送量のうち、約35%が運べなくなるという試算もあるようだ。労働時間が超過した場合は当然、事業者は労働基準法違反となり、罰則が科される。この法規制による「物流の2024年問題」について、全日本トラック協会の吉田将一企画部次長に話を聞いた。

 ─「物流の2024年問題」は通販事業にどのような影響を及ぼすのか。
 法規制により、年間の時間外労働は、960時間が上限となる。そのため、これまで輸送できていた荷物が運べなくなるという問題が生じるとされており、「物流の2024年問題」と呼ばれている。
 国土交通省などが開催している検討会の資料では、30年までに、約35%の荷物が運べなくなるとされている。
 仮に運んでもらえたとしても、繁忙期の日時指定は困難になる可能性が高い。「12月の繁忙期に、発注した商品が納品されない」というケースも予想される。
 夏のボーナスやクリスマスなど、通販企業の商戦時期は重なるものだと思う。販売事業者は、「売れるタイミングなのに、在庫を確保できない」メーカーは、「在庫があるのに出荷できない」となってしまう。
 そういった繁忙期を見据えた計画的な発注を行ったり、あらかじめ在庫を用意したりしていくことも重要になってくると考えている。


■取引を断られる可能性も

 現状の仕事量では、労働時間を適正にするのが難しいと判断した場合、今まで取引のあった企業との取引を断らざるを得ないケースが出てくるかもしれない。
 運送事業者からは、「長距離輸送が現実的に厳しい」「販売価格の値下げのしわ寄せが物流にきている」との声もある。
 これまでは通販事業者のニーズに応えるため。過剰な物量にも対応できていたが、今後そうはいかなくなるだろう。


■「送料無料」じゃありません

 ─販売事業者がすべきことはあるのか。
 「送料無料」の意識を変えていくことだと思う。
 最低賃金、車両価格、燃料価格と、あらゆる価格が上がっている。そんな中、「送料無料」を打ち出すのは、運送事業者にとってはドライバーの仕事を否定されるように感じてならない。
 「荷物を運ぶドライバーにも給料が発生しているのに、『送料無料』というのはおかしい」と考えてもらえるよう、消費者をはじめ社会全体の意識を変えていくことが、この問題の解決につながっていくのではないか。
 当協会でも21年から、「『送料無料』じゃありません!」という内容のバナー広告を作成し、ウェブ中心に発信している。
 「荷物を運べば、お金がかかる」。この当たり前のことを、当協会や通販事業者が発信していき、問題解決につなげていけたらと思う。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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