【公認会計士税理士甲田拓也事務所 甲田拓也税理士】 〈対面販売企業のインボイス対応〉まずは販売員・会員の負担額を算出して (2022年2月24日号)

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 インボイス制度への対応に当惑している訪販・ネットワークビジネス(NB)企業は多い。「販売員や会員に消費税の課税事業者になってもらうべきか」といった点が、頭を悩ませるポイントになっているようだ。化粧品メーカーの対面販売事業者(販売総代理店)の税務申告なども手掛ける、公認会計士税理士甲田拓也事務所の甲田拓也税理士は、「まずは、下請けとなる販売員や会員が課税事業者となった際、年間どれくらいの消費税を負担する必要があるのかを計算し、その情報を会社と販売員で互いに共有する必要がある」と話している。甲田拓也税理士に、インボイス制度に対して対面販売企業がとるべき対応方法について聞いた。

■二つの現実的な対応

 ─訪販やNB企業が採用できる、インボイス制度への対応方法にはどのようなものがあるか。
 訪販・NB企業は、多くの会員・販売員を抱えており、その多くは個人事業主だ。訪販・NBの企業がとるべき、インボイス制度への現実的な対応方法としては二つあると考えている。
 一つは、最もスタンダードな方法で、すべての会員や販売員にインボイス事業者(適格請求書の発行事業者)になってもらう方法だ。この場合、年間の売り上げが1000万円以下の免税事業者の販売員・会員も含めて、一律で課税事業者になってもらうことになる。販売員一人一人に、会社から受け取った報酬に含まれる消費税の額を、国に申告し、納税してもらうという方法だ。
 ただ、この方法は、多くの税理士が指摘していることだが、個人事業主である販売員にとっても、企業にとっても、税理士にとっても、大変な手間やコストが発生することになる。毎年増減する販売員や会員が、インボイス番号を取得しているかどうかを、会社がチェックするのも大きな負担だ。「税負担が増えるのならば廃業する」という販売員も少なからず出てくるだろう。企業にとっては、契約しているパートナーや下請けに対して、どのような意識で対応してきたかが試されることになるだろう。
 もう一つは、訪販企業やNB主宰企業が、インボイス番号を取得した販売員の消費税を負担してあげるという方法がある。インボイス登録によって新たに生じた消費税の額と同額を、会社側が負担し、それぞれの販売員に支払う、という方法だ。
 具体的にはまず、契約している販売員や会員全てに、インボイス制度に登録してくれるよう促す方針を決定する。その後、それぞれの販売員に、実際の自分の消費税の負担額がどれくらいになるかを計算し、会社に申告してもらう。納税に対する意識を持ってもらうためにも、販売員に計算してもらう事が大事だと考えている。
 その後、会社の法人税への影響なども加味しつつ、販売員が新たに負担する消費税負担額に相当する金額を販売員に寄付するのだ。


■還付金の制度も

 ─課税事業者になるのを嫌がる会員が少なからずいるのでは?
 課税事業者になることはデメリットばかりではない。

(続きは、「日本流通産業新聞」2月24日号で)

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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