〈訪販大手〉 販売員増で業績向上に貢献/コロナ禍で人材確保に追い風(2021年7月15日号)

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 業務委託契約を中心とした販売員を抱える大手訪販企業や食品宅配企業では、新型コロナウイルスの影響を機に人材採用の環境が改善し、増収につながっている。ヤクルト本社は、離職率が大幅に改善したほか、新規採用が進んだことで21年3月期末の販売員「ヤクルトレディ(YL)」の数が11年ぶりに増加に転じた。ワタミは、販売員への処遇改善が奏功しているほか、若年層の販売員が増加して増収増益を達成している。コロナ禍の逆風にある中、業務委託販売員を抱える訪販企業が、柔軟な働き方を提供して販売力の底上げを図っている。

 ヤクルト本社は、9カ年の長期計画「ヤクルトビジョン2020」の最終年度となる21年3月期(20年度)、11年ぶりに販売員「ヤクルトレディ(YL)」の数が前年を上回った。コロナ禍にあって、消費者の健康意識が高まったほか、ウェブを活用した顧客接点づくりも成果を上げた格好だ。
 機能性の高い戦略商品の投入も後押しした。「ヤクルト400W」の販売エリアを拡大したほか、「ヤクルト1000」の販売エリア拡大で、売り上げと利益の確保を狙い、YLの収入増加を図った。
 こうした高単価な商品が売れたことで家族の利用が増え、一世帯当たりの購入単価の押し上げにつなげた。その結果、YLの1カ月の収入が15万円を超える「Sタイプ」が前期比5ポイント増の2割になった。10万円以上15万円未満の「Aタイプ」は同7ポイント増となり、合わせるとYL全体の過半数となった。「平常時に地道に価値普及活動を実施してきたことが結果的にお客さまから追加購入につながっている」(松井裕一郎宅配営業部長)と話す。
 22年3月期は、期初の4月に「ヤクルト1000」の全国展開を開始。地域限定で販売する「ヤクルト400W」についても8月30日には全国展開を計画する。「この大型商品を展開していく中で、YLの収入アップに大きな期待が持てる」(松井氏)としている。


■離職率も減少し、YL増加

 YLの年間新規採用数が12年ぶりに前年よりも増えたことに加え、離職するYL数も大幅に減少し、YL数が11年ぶりに純増した。
 貢献したのがここ数年進めてきた労働環境の改善だ。コロナ禍では、接触回数を減らすことを目的に、顧客の了承を得た上で、週1回の訪問回数を2週間おきに減らす販売会社も増えた。「ヤクルト400」の賞味期限が長くなったことも貢献している。従来から多様な働き方を打ち出してきたが、コロナ禍でこうした動きが加速した。全体の2割が2週間に一度の配達ペースになったという。
 募集の際には「週3日から就業可能」と条件を緩和した提示も始めた。子育て中の人でも子どもの成長に合わせて働く日数を増やせるようにするなど柔軟性を高めている。販売会社には数年前から柔軟な採用活動について案内していたがコロナ禍で推進された形だ。
 約90社の販売会社で先行実施する、YLの「雇用化」も広げている。22年3月期中には、残り10%の販売会社に導入してもらい、選択肢として「社員型YL」を増やす考えだ。
 雇用化は、月間で一定以上の売り上げがある全国の約6000人の販売員への雇用化の案内を進める。販売会社の中には、販売員から管理職、役員に昇格する事例も出てきており、販売員の多様なニーズに合わせた働き方の提案を推し進める。


■増収増益の背景に販売員増加

 ワタミの「宅食事業」における21年3月期業績は、コロナ禍を受けて、従来の高齢者層だけでなく、ファミリー層の開拓が進んだことから増収増益を達成。業績の背景には、販売員「まごころスタッフ」の増加もある。

(続きは、「日本流通産業新聞」7月15日号で)

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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