〈大手訪販企業〉 顧客接点、ウェブ活用が増収寄与/マンパワー依存から脱却し、成長軌道に

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 18年3月に決算期を迎えた大手訪販の上場企業の売り上げが回復基調にある。ダスキンのクリーン・ケア事業が増収だったほか、ヤクルト本社の訪販事業は、販売員「ヤクルトレディ(YL)」が減少しているものの、YL1人当たりの売り上げが伸びて増収を維持した。3期連続で減収していたワタミの宅食事業も、低価格帯の商品の販売が好調で、4期ぶりに増収に転じた。訪販は「販売員数×1人当たりの販売額=売り上げ」というマンパワー構造になりがちだ。そのため、販売員の確保、顧客との接点作りが大きな課題となる。好調企業に共通するのは、独自の研修制度を構築して販売員のスキルを向上させたり、顧客のニーズを捉えた商品戦略を進め、積極的にウェブを活用した顧客との接点作りを強めている点だ。マンパワーに依存することなく経営課題を解決し成長につなげている。

 ダスキンのクリーン・ケアグループの売上高は、前期比0.6%増。このうち、家庭訪販事業は第3四半期(17年4—12月)まで4期ぶりに増収を維持するなど堅調だった。エアコンクリーニングなどの役務サービスに加え、モップなどをセットにした「おそうじベーシック3」の売り上げは、前期比1.3%増だった。さらに、期初からレンタルを開始した「ロボットクリーナーSiRo」や羽毛布団などの「寝具」の販売も売り上げを押し上げた。「布団丸洗いサービスを展開する中で寝具が欲しいというニーズに応えた」(ダスキン・●(●は「楢」の異体字)原純一取締役常務執行役員)と話す。
 15年4月に開始した会員制度「ディー・デュエット」の会員数も4月末で61万人に増加。メルマガなどで販売員が説明しきれない商品やサービスに関する情報を提供。販売員がタブレット端末を使って、動画などで商品説明をできるようにして、生産性の向上につなげた。●(●は「楢」の異体字)原氏は「タブレット端末で動画を見てもらえれば説明は不要となり、販売員のスキルに頼ることもない」と話す。
 ヤクルト本社では、ヤクルトレディ(YL)による宅配専用商品「ヤクルト400類」の販売本数が同2.4%増だった。1日あたり355万本が売れた。YLの乳製品の販売数は前期比横ばいを維持した。YL数が584人減少したなか、1人当たりの販売増でカバーした格好だ。ヤクルト本社の松井裕一郎宅配営業部長は「YLの平均月収が10万円を超えたことで、満足度が向上し、離職防止にもつながった」と話す。これはYLに対する研修制度が成果を上げた表れだという。
 サニックスでは、戸建て向け住宅サービス(家庭訪販事業)の「HS事業部門」において、人事異動による営業体制や顧客管理体制を強化、拡充している。適切なタイミングで既存顧客へのアフターフォローを行えるようになったという。その結果、「白蟻防除施工」は前期比21.7%増、「床下・天井裏換気システム」は同68.7%増、「基礎補修・家屋補強工事」は同56.7%増と、いずれも2桁増収を達成した。

(続きは、「日本流通産業新聞」5月31日号で)

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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