数年前から注目度が一気に高まった「越境EC」だが、昨年くらいから閉塞感を吐露する通販企業が増えている。これまで「越境EC=中国EC」だったが、関税の変更や中国大手モールでの販売の難しさなどを痛感し、事業を見直している通販企業も少なくない。海外市場で成長を狙う通販企業が新たに照準を絞っているのが、”ネクストチャイナ”といわれる中国以外の海外市場だ。健康食品や化粧品のEC事業を行うオンライフ(本社東京都、高崎航代表・持丸正裕代表)は、新興企業ながらも台湾に本格進出し、EC事業の年間売上高を20億円以上に拡大している。グローバルEC事業を展開するBEENOS(ビーノス)の直井聖太社長も「越境ECは中国だけではない」と話す。”ネクストチャイナ”の本命は台湾だが、将来性を見込み東南アジアを見据える通販企業も増えている。
■日系首位は売上50億円
健康食品や化粧品のEC事業を行うオンライフは05年に創業し、ネットビジネスや飲食業を展開しつつ、EC事業に参入した。国内でサプリメントや化粧品のEC事業を拡大し、新たな成長を目指して台湾のEC市場に進出した。
15年8月には台湾支社を設立。日本から台湾に商品を販売する「越境ECモデル」から、現地で商品製造からマーケティング、販売まで行う「現地ECモデル」に移行していった。
「台湾でのEC事業は年商20億円を超える規模に成長した。日系企業では3番手ぐらいではないか。トップは日本でも大手の企業で年商50億円くらいに達していると思う」(高崎社長)と話す。
日本企業の台湾EC事業は13年ごろから活発化している。ダイレクトマーケティング支援のファインドスター(本社東京都、渡邊敦彦社長)が、国内の通販大手企業の台湾支援を開始。台湾での通販事業を代行するサービスを開発し、進出が加速した。現在はグループ会社のスタートアジア(本社台湾台北市、藤原徹平董事長)が台湾で支援事業を展開している。
親日家が多い台湾市場に日本のリピート通販のノウハウを持ち込んだことで、参入企業の多くは堅調に売り上げを伸ばしていった。
オンライフも早期に台湾に進出し、現地で通販事業を内製化した。現地法人を作り、製造から販売まで手掛けることで、輸入にかかる関税や、越境物流のコストを気にすることなく、現地でのEC事業が成長できたという。
国内の通販支援企業も台湾のEC市場に目を付け、相次いで進出している。スタートアジア以外にもコンサルティング会社やネット広告代理店、アフィリエイト仲介会社などが台湾ECの支援事業を手掛けている。
物流支援のエスプールロジスティクス(本社東京都、小林正憲社長)は、台湾で最大手のECモール「PChome」の進出支援サービスを開始した。同モールへの出品から物流までトータルで支援するという。
■台湾の次は東南アジア
オンライフは台湾の次の市場として東南アジアを狙っている。
(続きは、「日本流通産業新聞」3月22日号で)
〈通販企業の海外EC〉 ”ネクストチャイナ”に照準/台湾で年商20億円超の新興企業も
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