【「楽天市場」勝負の時】 24年度は成長鈍化/「モバイル拡大」「売り場の進化」が鍵(2024年2月22日号)

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 楽天グループ(楽天)が2月14日に発表した23年12月期における国内EC流通総額は、前期比6.9%増の6兆487億円だった。コロナ特需の反動もあるが、国内EC流通総額の増加率は直近5期の決算を見ると、20年12月期の19.9%増をピークに段階的に下がり、今回は1桁台に突入した。外的要因やモバイル投資の余波などの影響で、今後も成長は一時的に鈍化する見通しだ。日本を代表するECモール「楽天市場」はこのまま沈んでしまうのか、それとも逆転のシナリオはあるのか。モバイルの契約拡大と、売り場の進化、店舗の結束が、「楽天市場」の今後の成長を左右しそうだ。(関連記事を3面に掲載)

 23年10―12月期(純第4四半期)の国内EC流通総額は、前年同期比6.2%減の1兆6067億円になった。ふるさと納税のルール変更やSPU(スーパーポイントアッププログラム)の改定の影響があったという。24年12月期の国内EC流通総額の成長率も前年よりも緩やかになると見込んでいる。
 国内EC流通総額の成長率は、コロナ特需で20年12月期の大きく伸びた。その後もコロナ禍の追い風や、全国旅行支援の影響で「楽天トラベル」が伸びたことで2桁成長を維持していた。
 24年12月期はコロナ特需が完全に収束したり、旅行業界向けの支援策がなくなったりする影響を受ける。EC市場全体の成長が緩やかになりつつあるが、楽天はその影響を受け、1桁成長が続きそうだ。


■出店料値上げへ

 さらに楽天は1月25日に開催した「楽天市場」出店者向けイベント「楽天新春カンファレンス2024」において、システム投資コストの増大を背景に、出店プラン(月額出店料)を一部変更すると発表した。変更内容の詳細については、2月中に発表する予定だが、値上げする方向性は間違いないだろう。
 値上げの時期や変更幅にもよるが、出店者からの反発や、場合によっては退店につながる可能性がある。コロナ禍に出店者が増え、約5万7000店舗まで増えていたが、値上げによって店舗数も減少傾向に転じる可能性もある。


■モバイルが影響か

 値上げの要因としてシステム投資の増大を挙げているが、楽天の全社的な情勢をみると、「楽天モバイル」への先行投資の影響が、「楽天市場」にも及んでいると考えられる。23年12月期の決算では、収益向上の取り組みは進んでいるものの、連結業績における当期純損益は3394億円の純損失だった。
 24年12月期も収益力を回復する施策を進めていくと言及しており、「楽天市場」の出店料値上げもその一環だと見て取れる。
 昨夏にはクーポンの今春からの有料化も発表している。「楽天モバイル」の黒字化までの道のりが長いと考えると、今後、また新たな値上げが、出店者に課せられる可能性はあるだろう。
 市況が悪化する中での、相次ぐ値上げは出店者離れにつながるリスクをはらんでいる。


■モバイル重視の施策

 23年10―12月期(純第4四半期)の国内EC流通総額が前年割れした要因にもなったSPUの改定だが、具体的には「楽天モバイル」ユーザーへのポイント付与率を上げるという変更だった。
 楽天としてもグループを挙げて、

(続きは、「日本流通産業新聞」2月22日号で)

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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