ソーシャルギフトプラットフォームの新規顧客獲得競争が激化している。コロナ禍に「会えない時間」が増え、ソーシャルギフトサービスも増えている。利用者の選択肢が増えたことで、競争も過熱気味だ。有力プラットフォームは一般的なギフトシーンに加えて、より日常的に使ってもらえるように細やかなプレゼントシーンの提案に注力している。ソーシャルギフトの取扱商品数で他社と差別化を図っているサービスもある。有力プラットフォームは独自の戦略で、新規顧客獲得を急いでいる。
ソーシャルギフトとは、LINEやメールなどで、URLを送信するだけで、相手の住所や本名を知らなくても手軽にプレゼントを贈ることができるサービス。コロナ禍においては、なかなか対面で会えない友人や、SNS上でしかやり取りのない友人にプレゼントを贈ることができるサービスとして認知が拡大している。
矢野経済研究所が21年に発表した調査では、25年度までにソーシャルギフトの市場規模は4057億円にまで拡大すると予測している。20年度のソーシャルギフトの市場規模が2075億円のため、5年間で約2倍に成長する計算だ。ソーシャルギフト市場は成長著しい、魅力的な販売手法になりつつある。
■「LINE」機能が強み
利用者の増加に伴い、多くの有力企業は他社と異なる戦略で新規顧客の獲得に奔走している。
Zホールディングス傘下のLINEは、「LINEギフト」において、モバイルメッセンジャーアプリ「LINE」を最大限活用し、顧客獲得に努めている。
国内月間アクティブユーザー数が、約9400万人を超える「LINE」で手軽にギフトを贈ることができるサービスをアピールし、安定的な成長につなげている。23年5月時点で「LINEギフト」の累計ユーザー数は3000万人を超えた。
「『LINEギフト』が他社と異なる点は、やはりコミュニケーションツールの『LINE』があるかどうかだ。『LINE』が『LINEギフト』のベースになっている」(LINE・ギフトプロダクト企画室・米田昌平室長)と話す。
「LINE」で友人と会話をしているときに、資格試験に合格したことや、部活で試合に勝利したことなど、おめでたいことを知り、すぐに「LINE」上で商品を贈ることができる。
「LINE」には、トップページにユーザーがフォローしている友人の誕生日を自動で表示する機能がある。加えて「LINEギフト」をフォローしていると、「LINE」のプロフィールに誕生日を登録している友人の誕生日を一覧で確認することも可能だ。
会話をしながら、すぐにプレゼントを贈れたり、友人の誕生日を自動で表示することで贈り忘れを防いだりと、「LINE」の機能が「LINEギフト」の成長を担っている。
販売商品は学生でも手が届きやすいよう「スターバックス」や「ハーゲンダッツ」のギフト券など、1000円以内の商品も販売している。
「日々のちょっとしたお礼に贈れることを追求している。だが、『スターバックス』や『ハーゲンダッツ』のギフト券は、他社サービスでも導入している。そのため、当社では手軽に贈れる商品は残しつつ、他の形で他社と差別化を図る必要があると考えている」(同)と説明する。
「LINEギフト」では現在、メーカーとの共創や、さらなる日常での利用シーンの提案に注力している。メーカーが新商品を発売する際、「LINEギフト」限定で先行販売することで、「LINEギフト」で購入する理由を作っている。
「昨年の冬には、大人気コスメブランドからクリスマス限定コレクションを『LINEギフト』で先行販売したが、販売数も好調だった」(同)と明らかにする。
利用シーンでは、誕生日のほか、車での送り迎えを感謝する「車で送ってくれてありがとう」や、ご飯をご馳走してくれたお礼に贈る「ご馳走さまギフト」など、普段の日常で使えるシーンの提案を行っている。
「まだまだいろいろなシーンで、さまざまなニーズがあるはずだ。さらに品ぞろえを拡充し、多くの利用者獲得を目指していく」(同)と意気込みを語る。
■67万点そろえ優位に
オンラインギフトサービス「Giftmall(ギフトモール)」や専属バイヤーが厳選したギフトを取りそろえる「Anny(アニー)」を提供するギフトモール(本社東京都、藤田真裕CEО)では、豊富な商品数で他社と差別化を図っている。「Giftmall」でのソーシャルギフト対応商品数は67万点となっており、「Anny」でも多くの商品が、ソーシャルギフト対応商品となっている。
(続きは、「日本流通産業新聞」6月1日号で)
【ソーシャルギフト最前線】 顧客獲得競争が激化/細やかなシーン提案や商品数で差別化(2023年6月1日号)
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