【昆虫食通販】 「陰謀論」でSNS炎上/「メディアは信用できない」との声も(2023年4月6日号)

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昆虫食を原料に生徒が給食を調理

昆虫食を原料に生徒が給食を調理

 23年2月後半をピークに、昆虫食を批判するSNS投稿が急増する事態となった。「コオロギ飼育に数兆円の税金が使われている」「昆虫食で病気や不妊になる」「学校給食で学生に無理矢理食べさせている」といった内容が多く見られ、「昆虫食陰謀論」とやゆする声も聞かれる。こうした投稿が盛り上がる背景には、大手企業の昆虫食参入や、徳島県の一つの高校の給食に昆虫食が使用されたことなどがあるようだ。だが、その学校の給食では、生徒の自由意志に基づいて、昆虫食にするかどうかを選択できるようになっており、こうした形での学校給食への採用は22年11月から行われている。大手企業の参入も22年ごろから続いていることだ。昆虫食ECや原料販売事業者の多くは、「このタイミングで炎上する理由が分からない」「発信内容には、信ぴょう性がほとんどない」などと、状況を憂慮する声を挙げている。一度炎上してしまった以上、そう簡単に、「完全な鎮火」は期待できない。事業者は有効な対応策を模索しているようだ。

■昆虫食給食への批判

 食用コオロギの生産やECなどを行うグリラス(本社徳島県)では22年11月、徳島小松島西高等学校の学校給食への、国産食用フタホシコオロギ粉末「グリラスパウダー」の供給を行った。
 同校には食物科があり、授業の一環として、半年以上前から「食用コオロギ」についての授業を行っていたという。グリラスでは、「1年以上前、高校から『昆虫食の授業をしてほしい』という依頼をいただいた。そこから構想を練り、半年後に授業を行った。授業の中では、食用コオロギの活用方法について話すこともあった。そうしたことが、給食への昆虫食導入へとつながっていった」(川原琢聖PRマネージャー)と話す。
 同校の食物科は、調理師を目指すクラスということもあり、生徒がローテーションで給食を作っているという。給食を食べるかどうかは、各生徒の判断に任されており、約3分の1の生徒が給食を食べているという。昆虫食給食の日は、給食に昆虫食を使うことを事前に告知。その上で、メニューを選択式にし、昆虫食でないメニューも選べるようにしたという。
 「授業からの関係性があって実現したことであり、生徒には『食べる・食べない』の選択肢もあった。にも関わらず、多くのメディアは、『学校給食に昆虫食で批判殺到』のように、センセーショナルに取り上げた。当社や学校に対しての取材もあったが、話した内容が全く反映されていないメディアも少なくなかった」(同)と話す。
 某メディアは、同校の卒業式の前日に、「コオロギ給食に苦情殺到」のような記事を掲載した。そのため卒業式の前日や当日に、電話が鳴りやまない事態となってしまったようだ。グリラスの川原氏は、「当社にくる問い合わせに関しては、全て対応している。だが学校に迷惑をかけないでほしい」と話す。


■売り上げは変わらず

 昆虫食ECを展開する事業者に、2月以降の売れ行きの変化について聞いたところ、「変化なし」「微増」との回答がほとんどだった。

(続きは、「日本流通産業新聞」4月6日号で)

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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