【食品通販企業の顧客関係強化策】 ”企画力”で熱心なファン育成/「体験」「ユニーク」など多彩なイベント実施(2023年3月23日号)

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コンシューマー事業部門事業統括・望月卓郎氏

コンシューマー事業部門事業統括・望月卓郎氏

 23年に入っても、「CPA(顧客獲得単価)」の上昇が止まらない。ウェブ広告やSNS広告などで新規顧客を獲得するのには限界があり、23年はより一層、既存顧客の定着に注力する必要がある。食品通販企業は、コロナ禍が収束に向かっていることもあり、リアルイベントやオンラインイベントを通じて、より熱心にブランドを愛する「ロイヤルカスタマー」の育成に注力している。イベントに成功している企業は、自社の理念や特長を生かした”企画力”に秀でている。有力食品通販企業の顧客関係強化策に迫った。

■顧客との”接点”拡大

 通販業界でいち早くウェブ広告一辺倒にならず、ユニークな販促を展開して、既存顧客のロイヤルカスタマー化に成功している企業がある。クラフトビールブランド「よなよなエール」を展開するヤッホーブルーイング(本社長野県、井手直行社長)だ。
 97年、同社は「よなよなの里 楽天市場店」を開設した。開設してから現在まで、ウェブ広告を活用しながら、さまざまなイベントを実施して、顧客との接点強化を図ってきた。
 「何でも一辺倒ではいけない。今でもウェブ広告を使っているが、それに頼りすぎるのではなく、さまざまなイベントを行って、顧客と触れ合うことを大事にしている。ECでの戦略というよりも、会社全体でどうやって『よなよなエール』と顧客のタッチポイントを増やせるかを考えている」(コンシューマー事業部門事業統括・望月卓郎氏)と説明する。
 同社では、「D2C」の事業形態を生かしたイベントや、世の中を巻き込むイベントなどを企画して、顧客の”ファン化”を推し進めている。
 17年に日本政府が「プレミアムフライデー」を呼び掛けたとき、「早く帰れる日を増やそう」というキャッチコピーを掲げ、「定時退社協会」という架空の協会を立ち上げ、プロモーションを実施した。
 「多くの会社員を集め、『定時退社訓練』と称し、『メールをミスなくタイピングせよ』『部下の書類を漏れなく承認せよ』などのタイムリミットを設けたイベントを開催した。イベントは非常に好評でSNSで当社のことが話題になった。このようなイベントを定期的に開催し、顧客に喜んでもらえることを追求している」(同)と話す。
 直近では23年3月、結婚・還暦などとは異なり、一般的には人生の節目と認識されていない、卒乳などの”隠れた節目”をお祝いするサービス「隠れ節目祝いbyよなよなエール」の提供を開始した。合計5100人に同社のクラフトビールを無料プレゼントする。
 「隠れ節目祝いbyよなよなエール」は、「卒乳」「イヤイヤ期卒業」「寝かしつけ卒業」「お弁当作り卒業」「あなただけの卒業」の五つの”隠れた節目”を迎えた人をお祝いするサービス。
 就職・結婚・還暦など一般的に認識されている「人生の節目」以外にも、猫を飼った、確定申告を終えた、卒乳したなど、日々の生活には祝いたくなるようなおめでたい節目がいくつもある。こうした”隠れた節目”に光を当てることで、人生にささかやな幸せを届けるための取り組みとして本サービスの提供を開始した。

(続きは、「日本流通産業新聞」3月23日号で)

顧客に寄り添うイベントを実施

顧客に寄り添うイベントを実施

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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