【食品通販事業者】 <仕入れ価格高騰対策に奔走>値上げによる顧客離れに苦慮/解決策は”生”の体験提供

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 23年に入っても、さまざまな原材料の高騰が続く。食用油や梱包材、小麦粉などの価格高騰が、食品通販事業者を悩ませている。多くの食品通販事業者は、原材料価格の高騰を受けて、商品の値上げを選択している。だが、値上げで顧客離れが生じたり、顧客から値上げ理由の説明を求められたりするケースもあるようだ。あるスイーツを販売するEC企業は、「このまま原材料高騰が続き、当社も値上げをすると、さらなる顧客離れが起きるだろう」と危惧する。有力食品通販事業者の値上げ幅と原材料高騰対策などを紹介する。

 プロテインを販売するA社は、22年は1月、6月、12月の3回に分けて、商品の値上げを実施した。プロテインの原材料であるホエイ(乳清)の価格が上がり、平均200円の値上げを繰り返した。
 「昨今のプロテインブームでホエイもソイ(豆乳)も価格が上がり、当社としても値上げを選択せざるを得なかった」(A社代表)と打ち明ける。
 値上げを実施するだけでなく、社内努力も行い、価格高騰分の全てを顧客に負担させることはしていない。
 「少しでも安く仕入れられるよう、国を選ばず仕入れ先を変更している。ホエイだけでなく、アミノ酸や香料なども、より安く仕入れられる企業を探している」(同)と話す。
 だが、同社では度重なる値上げにより、ツイッターなどで顧客から値上げ理由の説明を求められたという。企業の公式SNSでプロテインの原材料であるホエイが値上がりしていることを伝えても、それだけでは理解してもらうことができず、商品購入を控える消費者も続出した。
 「文面での周知では限界があると感じた。直接の謝罪ではないが、顧客としっかり話す機会を設ける必要があると考えた」(同)と話す。


■顧客に対面で説明

 同社では、新たに顧客と接点を持てる機会の創出に注力した。オンラインと対面で値上げした経緯を説明。さらにプロテインの試飲会なども同時開催し、企業と顧客が顔を合わせられる場の提供に努めた。
 「通販でも結局は人と人。きちんと顔を合わせて、値上げの理由を説明し、新商品の試飲会をすることで、顧客に『ここまでしてもらえている私は優遇されている』と思ってもらえるはずだ。さらなる顧客離れを防ぎ、より当社のファンになってもらえる顧客の拡大を目指した」(同)と話す。
 試飲会で集めた顧客の声が、商品開発のヒントにもなっているという。同社がこだわって商品を開発しても、消費者の反応が芳しくないケースもあるのだという。
 「消費者が求める商品に関して、認識の違いがあった。現在では定期的に消費者とコンタクトを取れているため、求めている商品やサービスが、以前より容易に分かるようになった」(同)と話す。


■収穫ツアーを企画

 「楽天市場」などでコメのネット販売を手掛けるB社は、コメの仕入れ価格は高騰していないが、資材や輸送費の高騰により、22年冬に商品の販売価格を従来から10~20%ほど値上げした。
 のし用紙を仕入れる企業を変更するなどして、可能な限り社内努力でコスト上昇分を吸収しようとしたが、それでも補えなかった分は販売価格に転嫁する形になった。
 コメの値上げ後、消費者から「なぜコメなのに値上げしたのか」という声が寄せられたという。
 「テレビでコメの仕入れ価格は、あまり上昇していないといったニュースが流れ、必然的に消費者は値上げの選択に疑問を持ったのだろう」(B社代表)と説明する。

(続きは、「日本流通産業新聞」2月9日号で)

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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