【22年無店舗販売化粧品市場予測】 通販・訪販に迫る値上げの乱気流(2022年6月30日号)

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【化粧品通販 市場予測】 円安が好機なるか/コロナ収束で越境EC回復に期待

 化粧品通販市場は、訪日外国人の再増加によるインバウンドや越境ECの活発化が見込まれる一方、原材料高騰に伴う商品の値上げやコスト抑制などのマイナス影響が背中合わせとなりそうだ。長引くマスク生活で低迷が続くメーキャップ需要も、コロナ禍の収束で回復が期待される。現在の化粧品通販市場を天気予報に例えるなら「曇り」。今後は「晴れ時々曇り」になると本紙はみる。
 通販化粧品は、通販専業が少なくなり、ファンケルや新日本製薬のように卸売りや直営店舗を手掛ける例が増えた。こうした事業者にとって、インバウンドの回復は実店舗の売り上げだけでなく、訪日客が帰国した後も愛用してくれれば、越境ECの回復にもつながっていく。I―ne(アイエヌイー)やソノコの経営陣は、訪日客が日本ブランドに親しみ、越境ECにもつながっていく好循環に期待を寄せている。
 資生堂は、「コロナ感染拡大の長期化に伴い、短期的にインバウンドを取り込むのは難しい状況にある」と冷静に分析しつつ、渡航解禁に合わせた施策は継続して検討していく方針としている。
 インバウンドは中国が多いというファンケルは当社のアンケートに、「コロナの状況次第で中国からの訪日客数が増加することで、需要の復活は十分に見込める」と回答した。小林製薬は、「街中でのインバウンド需要は一定の回復が見込まれるが、通販にはその影響はあまり受けない」と慎重な見方を示した。

ジモスは越境強化を検討

 円安が越境ECには好機になるという見方もあり、ナックの子会社で化粧品や健康食品の通販事業を行うJIMOS(ジモス)は、この流れを受けて越境ECの強化を検討している。
 原材料の高騰については懸念がくすぶっている。さまざまなコスト圧縮に取り組みながら、商品の値上げに踏み切っている企業も増えている。
 ソノコは、原材料の高騰は現時点で影響はないとしつつ、先行きは不透明と警戒感を示した。ソノコは製品のリニューアルを重ねながら、コストと利益率のバランスを調整していく方針だ。
 化粧下地「シルキーカバーオイルブロック」を主力としているアプロスは、原材料上昇の影響に対し、販売にかかるその他の費用の削減を検討しているという。
 価格を維持している企業が今後、値上げに踏み切ったとしても、既存顧客が離れないような商品力やブランド力の向上、ファンマーケテイングに向けた準備がこれまで以上に求められそうだ。
 業界内のトップ人事では、今年3月25日付でキューサイの社長に就任した佐伯澄氏が耳目を引く。佐伯氏は家電のECサイト「PREMOA(プレモア)」を運営するMOA(モア)の代表として成長をけん引してきた。家電ECでの実績を生かし、キューサイでどのような手腕を発揮するのか、関心が集まる。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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