【訪販・食品宅配・NB】 対面の強みで社会課題を解決/高齢者や地域安全に期待高まる(2022年6月2日・9日合併号)

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会報誌「もっと宅食ライフ」表紙

会報誌「もっと宅食ライフ」表紙

 コロナ感染対策として、人と人の対面を控える「新しい生活様式」が日常になってから約2年。これに伴い外出を控えることで筋力が低下する「フレイル」や、精神的な不安、人と会話をしないことによる健康面の弊害が指摘されている。訪販・ネットワークビジネス(NB)・食品宅配企業も販売員や会員が顧客と対面できずに大きな影響を受けたが、コロナ感染が落ち着いてくると、高齢者が外出して人と接したり、会話をしたりすることで健康を維持する大切さが見直されている。高齢者を狙った振り込め詐欺などの特殊詐欺を防ごうと、行政や警察が訪販・食品宅配企業と連携を強化する取り組みも増えてきた。訪販企業の事業の先にある社会課題の解決に向けた取り組みで、訪販の必要性や社会的な存在意義(パーパス)が注目されている。

■【訪販大手】 販売員の見守り活動活発

 ダスキンやヤクルト本社など訪販大手や食品宅配企業の多くは、販売員が顧客宅を定期訪問する強みを生かして、見守り活動や犯罪防止の啓発活動に取り組む。個別訪問で地域の安全・安心を維持し、社会課題を解決しようという目的だ。
 ヤクルト本社は古くからヤクルトレディ(YL)による「愛の訪問活動」に取り組む。YLが商品を届けながら、1人暮らしの高齢者の安否を確認したり、話し相手になったりする活動で、1972年から続いている。
 21年3月現在で全国の122の自治体などから要請を受け、YL約2600人が約3万6000人の高齢者宅を訪問している。海外でも、韓国ヤクルトが高齢者約3万人の安否を確認する活動を行っている。
 また、全国925の自治体や警察などと連携して地域の見守りや安全・安心活動を支える。顧客宅で異変を感じたYLが警察に通報し、警察官が発見・救助した事例もある。21年3月現在で全国104の販売会社が地域の安全に貢献している。
 ダスキンも21年8月から、東京都が行う「ながら見守り連携事業」に参画している。都内を走る約1800台の営業車両や自転車にステッカーを張り、日常業務とともに見守りを行う。高齢者と接しながら、異変があれば関係機関へ通報する。16年からは販売員が特殊詐欺に関する情報を届けたり、注意喚起を促すデザインのマットを使ったりして特殊詐欺防止の啓発活動を行う。


■【食品宅配】 ワタミ、自治体の連携500カ所に

 「高齢者が住み続けられる街づくりをテーマに、生活品を自宅に届けることは非常に意義がある。重要な生活インフラという意識で宅配事業に取り組んでいきたい」
 ワタミの渡邉美樹会長兼社長は、コロナ禍で主力となった宅食事業について社会的な役割が増してきたとみている。
 ワタミは、宅食事業で地域の警察署や自治体と連携した「見守り活動」や、行政と連携した「配食サービス」を強化している。今年から約30カ所の自治体と提携するなどその取り組みを加速する。全国283の自治体と見守り協定を結び、今期中に500カ所に増やす計画だ。警察署などの依頼を受け、「まごころスタッフ」が顧客に、チラシを使って特殊詐欺などの注意喚起をしている。
 社内には、自治体に提案を行う専門部署を新設した。本社スタッフが自治体の担当者にアポイントを取り、その地域の営業責任者が提案する流れだ。自治体から、柔軟な配食サービスを求められることもあり、週2日分からの注文を、6月下旬には週1日でも受け付けるようにする。
 遠くに住む家族から配食サービスを利用したいというニーズも高まっている。事前に利用者の緊急連絡先などを営業責任者と情報共有することを「まごころスタッフ」には徹底しているという。
 弁当の配達は原則として同じスタッフが決まった時間に届ける。「見守り活動(安否確認)」で高齢者の情報も日々報告されている。例えば、玄関先に配達した弁当が翌日もそのままだったため、警察に連絡を取り一命を取り留めたというケースもあるという。

(続きは、「日本流通産業新聞」6月2日・9日合併号で)

特殊詐欺啓発ページの「防犯かるた」

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ペレ・グレイスは「スキンエリクサー」で障がい者支援

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記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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