【AIGATE 竹尾社長が専門家と語り合う〈ECの未来〉】第1回〈Hmcomm 三本幸司代表取締役CEO〉/顧客の声データ化すればLTV向上も可能

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Hmcommの三本幸司代表取締役CEO(写真右)とAIGATEの竹尾昌大社長(同左)

Hmcommの三本幸司代表取締役CEO(写真右)とAIGATEの竹尾昌大社長(同左)

 通販企業のコンサルティングやM&A仲介を行うAIGATE(アイガテ)の竹尾昌大社長が、各分野のスペシャリストと”ECの未来”を語る連載企画。第1回のゲストは音声認識システムを開発するHmcomm(エイチエムコム)の三本幸司CEO。AIGATEはHmcommが提供するコールセンターのAI化を支援するソリューションを導入している。AIGATEはコールセンターの生産性向上だけでなく、Hmcommの技術を応用し、高性能なチャットボット開発も行う計画だ。両者が描くコールセンターの未来像や音声データの持つ可能性について語ってもらった。


 ──両社がアライアンスを組むきっかけは。
 ■三本 当社の「VContact(ヴイ・コンタクト)」というコールセンターをAI化する製品を竹尾さんのコールセンターに採用していただきました。この製品は音声データをリアルタイムに文字化できるだけでなく、機械学習を行い、音声認識の精度を上げることができます。
 ■竹尾 10年以上前からコールセンターを運営しています。VOC(ヴォイス・オブ・カスタマー=顧客の声)をマーケティングに生かそうとすると、以前はモニタリングした音声を文字起こしする必要があり、その作業が大変でした。「VContact」はコールセンターの音声を自動的に文字化できるだけでも驚きでしたが、AIを活用することで文字の変換技術がさらに向上すると聞きました。日本語は漢字があり、変換が難しいですが、やればやるほどきちんと文章になっていきます。当社ではこの製品を導入し、音声対応のデータベースを作成することで、チャットボットの品質向上につなげたいと考えています。


AIでLTV向上

 ──コールセンターの音声を文字化して何に生かすのですか。
 ■三本 コールセンターの効率化を図ったり、オペレーターをサポートできます。近年はオペレーターの方々の採用コストが高騰していたり、採用難が顕在化してきています。音声を文字化することで、参照できる応対スクリプトをシステムで提示することもできます。そうなれば、何カ月間も研修しなくてもOJT(現任訓練)ですぐ現場には入れます。タイピングが苦手なオペレーターでも、お客さまを待たせることなく回答例を入手できます。
 ■竹尾 三本さんの話を聞いて私はコールセンターの生産性向上だけでなく、音声認識技術を応用することで顧客のLTV向上も実現できると考えました。音声をデータベース化することで高性能なチャットボットを作りたいと考えています。
 単品リピート通販業界はこれまで、売り方ばかりにこだわってきました。商品は「売るための成分が入っていればいい」と言うメーカーがあるくらいでした。ただ、検索のアルゴリズムが変化したり、景表法や薬機法のレギュレーションが厳しくなったりする中で、状況は変わっています。
 本質的にはお客さまに対して何を課題解決するかが重要で、商品力をどう上げるか、ブランドコンセプトやサービスも磨く必要があります。そしてそれをどう伝えるかが大切です。私が支援している企業でも商品力を上げることはもちろん、ブランドの伝え方、悩みを解決する手法としてチャットボットが使えると思っています。


相談に完璧に対応

 ──チャットボットでどのようにLTVを向上させるのですか。
 ■竹尾 最近、シリコンバレーでは、人を介さずお悩み商材をネット販売している会社が伸びています。AIが学習することで、顧客の相談に対して完璧に受け答えし、購買につなげているのです。私が支援している企業でもAIを用いたチャットボットを活用し、お客さまの相談に対応して販売できるようにしたいと思っています。
 AIは箱であり、どう教育するかが重要となります。そのためには「知識」と「受け答え」の二つをインプットする必要があります。「知識」はこちらで用意したり、ウェブ上のコンテンツから把握することができますし、「受け答え」のノウハウはコールセンターの対応データを使うことで精度をより高めることができます。AIが学習すると、お客さまのさまざまなニーズに誰よりも的確に応えられるようになります。 
 ──音声認識技術を通販業界で生かすための課題は。
 ■三本 音声認識精度を向上するためには、学習対象となるたくさんのデータが必要です。通販業界では協和さまに早い段階で「VContact」を、導入していただいております。さらにAIGATEさまなどの企業さまの導入が増えれば「VContact」のエコシステムが形成可能となり、技術のベースラインを高めることができます。このように、われわれにとってはコールセンターの音声データは宝の山なのです。
 ■竹尾 三本さんは技術畑ですが、私はマーケッターです。私たちが実現したいと考えたことを、三本さんが持っている技術を活用することで実現でき、私たちからこの技術をこう活用したら生産性が上がるなど、進言することもできます。今の時代は専門性のある者同士がパートナーを組むことが、さらなる高い技術やアイデアを生み、スピードも重視できます。これからも良い協力関係を築けることができればと思います。
     (つづく)

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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