【ヤフー 輿水宏哲リテールEC事業本部長】 〈「アプリ」「来店型店舗」で事業拡大〉グループ力でQコマーストップへ(2022年12月8日号)

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 ヤフーが運営する食品や日用品の即配サービス(Qコマース)「Yahoo!マート by ASKUL(ヤフーマート)」が拡大している。Qコマース業界で初となる「来店型店舗」の開設や「専用アプリ」などを開発し、さらなる新規顧客獲得と既存顧客の活性化に注力している。外資系のQコマース企業は日本市場から次々と撤退している。日本で確実に成長を続ける「ヤフーマート」の事業責任者・ヤフーの輿水宏哲リテールEC事業本部長に、「ヤフーマート」の強みや他社との違い、ヤフーが見るQコマース市場の未来などについて聞いた。

■ZHDのグループ力活用

 ─国内ではまだQコマースが浸透していないと感じる。「ヤフーマート」の事業内容について改めて聞きたい。
 「ヤフーマート」は来店できない配達専用店舗(ダークストア)から近隣エリアに商品を配達するサービスだ。出前館のネットワークを活用し、アスクルの商品を配達する。ダークストア近郊には最短15分で食品や日用品を配達できる。ヤフー、アスクル、出前館といったZホールディングス(ZHD)のグループ力を活用している。
 ─最近だと日本市場から撤退する外資系のQコマース企業も多い。その中でも日本で確実に成長を続けられている要因は。
 主にアスクルの強みを生かした商品力、出前館のネットワークを生かした新規ユーザーの囲い込み、自社雇用の配達員で配送品質を向上できているからだ。やはりZHDのグループ力が、他社と異なる点だろう。
 アスクルの約3000種類の商品(店舗によって異なる)を取り扱っているため、日用品や食品など、多くのユーザーが”今すぐほしい”と思う商品を用意できている。また注文は出前館から受け付けるため、出前館をよく利用する人が”こういうサービスあるんだ”と知ってもらうことができ、購入につなげられている。
 配達員の勤務体系も他社と異なる。多くの国内Qコマース企業は、配達員に関してギグワーカー(インターネットを介して仕事を請け負う人)を雇っている場合が多いが、当社は出前館の配達員に加えて、直接雇用も開始した。
 直接雇用だと人件費などコストはかかるが、人材教育がしやすい。目先の配達員のコストを考えるのではなく、丁寧に人材教育をして、きちんとした配達サービスを提供できることの方が大事だと考えた。
 ギグワーカーは好きな時間に仕事ができるため、例えばだが「今日は雨だから配達したくない」といったことも通ってしまう。雨天時はデリバリーサービスにとって繁忙期のため、配達員がいなかったら販売機会の損失につながってしまう。これを防ぐために、最近は直接雇用のスタッフ増加を強化している。
 ─日本から撤退したQコマース企業に聞くと、1配送当たりの黒字化を達成できなかったと聞く。「ヤフーマート」はどうか。
 残念ながら細やかな数字やKPIなどはお伝えできない。

(続きは、「日本ネット経済新聞」12月8日号で)

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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