〈出版社のEC〉 ”EC限定”でファンの心つかむ/宝島社は会員倍増し100万人に(2022年9月22日号)

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新潮社は独自商品のラインアップを強化

新潮社は独自商品のラインアップを強化

 紙媒体の売り上げが年々減少傾向にある中、打開策として、EC事業を強化する出版社が増えている。新たにEC事業を開始したり、ECサイトをリニューアルしたりする出版社も増えている。独自商品を開発し、成功する企業も出てきている。自社の購読者層に合った、商品を厳選して販売し、短期間で結果を出す企業もある。成長著しい電子書籍市場とECのエッセンスを組み合わせたような、新たなサービスも生まれてきている。漫画・イラストなどのクリエーターを支援する取り組みとしても注目されているようだ。

■文藝春秋は初年度1億円

 「週刊文春」などを発行する文藝春秋(本社東京都、中部嘉人社長)は20年10月、食品や飲料を販売するECサイト「文春マルシェ」を開設した。初年度に当たる22年3月期の売上高は1億円を超え、当初の予想を大きく上回ったという。
 文春マルシェで販売しているのは高単価な食品だ。ECサイトの客単価は7000円程だという。「当社のバイヤーは、別の企業の通販事業で約20年の経験を持つ。過去の経験を生かし、売れ筋の商品をピックアップできていることが、好調の要因だと考えている」(柏原光太郎文春マルシェチーフプロデューサー)と話す。
 最近では、売れ筋商品の傾向を分析したうえで、オリジナル商品を開発する取り組みにも注力しているという。「当社の読者層は、高齢者が多い。高齢者が好むジャンルの、調理が簡単な商品が売れ筋になっている」(同)と話す。
 週刊新潮などを発行する新潮社(本社東京都、佐藤隆信社長)は21年4月、ECサイトのリニューアルを行った。これまでは、日用雑貨などを中心に販売していたが、産地直送品などの品数を増やしたのだという。
 「リニューアル後は、一時的に売り上げが伸びた。だが食品関連の売り上げが伸びた代わりに、それ以外の売り上げが下がってしまった」(コミック&プロデュース事業部ウェブ事業室・今村北斗氏)と話す。
 同社では今後、「独自性の高い商品を増やす」(同)方針だ。現在も、独自商品として開発した、作家の作品のキャラクターグッズなどは人気が高いようだ。「キャラクターグッズの難しさは、商品数と販売頻度のバランスにある。ファンはグッズを欲しがるが、むやみにグッズを発売すると、ファンが離れてしまうこともある。作家として本業に支障をきたすケースすらあるかもしれない」(同)と話す。「需要」と「供給」のバランスをとりながら、商品を発売していくことが求められているのだそうだ。


■会員数は100万人に

 自社ECサイト「宝島チャンネル」を運営する宝島社(本社東京都、蓮見清一社長)は20年12月頃から、ECの強化に取り組んでいる。広告出稿やSNSによる認知拡大にも励んでいるが、自社ECの限定商品の強化に、最も注力しているようだ。

(続きは、「日本ネット経済新聞」9月22日号で)

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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