ドアツードアや個別訪問などを行う訪問販売や食品宅配企業が、ネットや催事などで消費者との接点を広げている。ダスキンでは、行政と組んでシニア向けの窓口を設置したり、ショッピングセンター(SC)での商品体験イベントによる新規顧客の獲得手法が定着。食品宅配のらでぃっしゅぼーや(本社東京都)も7月から、契約を結んだ企業の従業員が割引価格で宅配サービスを利用できる制度を開始した。訪販業界では、消費者の在宅率低下に伴い、ドアツードアによる顧客接点を確保することが難しい傾向にあり、消費者との接点づくりは共通の課題。各社は、さまざまな集客チャネルでサービスの認知を高めることで、既存顧客への定期訪問につなげるための工夫を凝らしている。
「ドアツードアでの新規開拓は、100軒訪問して1軒会えるかどうか」
ダスキンの山村輝治社長は本紙のインタビューにこう話し、ドアツードアの厳しい現状についての認識を示した。
ダスキンでは、個別訪問で接点を持つことができない消費者との接点づくりを目的に、ショッピングセンター(SC)や郵便局、携帯電話ショップに体験スペースの設置を活発化させている。SCなどで開催される商品体験イベント「オタメシ祭り」の実施回数を年々増やしており、16年3月期は合計約6000回となった。実施場所や開催時期などは、本部が主導するのではなく、地域の特性に合わせて各地域本部が計画している。
シニア向けの接点も広げている。埼玉県和光市と提携し、市内に「わこう暮らしの生き活きサービスプラザ」を設けて、シニアの御用聞きを始めた。社内に専門部署を設置し、本格的な事業化に向けた検証も行っている。
6月は100人以上が窓口を利用し、健康や家の片づけといった分野に興味を示す人が多かったという。「シニアが集まる場所に当社が出向くことで、ダスキンとの接点を持ってもらうことが大きな狙い。各自治体とともに地域貢献できるような窓口を広めていきたい」と山村社長は展望を話す。
ネットを活用した消費者との接点も増やしている。ネットから注文があれば、加盟店を経由せずに本社から商品を送付したり、会員制サイト「DDuet」による情報配信を本格化。会員登録数は27万人まで増えている。17年3月期は、販売員経由の入会促進だけではなく、一般の媒体にも会員登録の情報を掲載。「スマホを持っている顧客が全て会員登録するくらいの気持ちで臨みたい」(山村社長)と意気込む。
■食品宅配は企業向け、食品スーパーに活路
食品宅配業界では、企業で働く社員への提案や定期宅配ではリーチできないユーザーの獲得を目的に、食品スーパーでの催事、保育園への食材提供などに力を入れる。
らでぃっしゅぼーやでは、14年に法人向けの営業を専門に担う「外販部」を設置し、越境ECを含めた法人向けの取引を拡大していく。17年2月期の売り上げ目標は10億円に設定している。
特に力を入れているのが、富裕層向けの保育園を全国展開する「ポピンズ」をはじめとする幼児向け施設への卸販売だ。「ポピンズ」へは、全体の75%にあたる60カ所に給食用の食材提供を目指す。
(続きは、「日本ネット経済新聞」9月8日号で)
訪販・食品宅配各社/顧客接点を増やし、新規開拓へ/ネット、催事、社員向けに活路
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