【通販に”生成AI時代”到来か】活用増える中、売上貢献事例も続々(2024年5月16日号)

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スタッフAI「ファッションメイト」

スタッフAI「ファッションメイト」

 通販EC事業における生成AI活用が進んでいる。パル(本社大阪府)は4月、スタッフのSNSアカウントを元に生成したAIスタッフが接客するAI機能「ファッションメイト」をECに本格実装した。2週間で1万回の接客を実施、チャット経由の売上拡大にも貢献しているという。TSIホールディングスでは4月、画像系の生成AIをファッションEC事業に導入した。ECの広告のクリエーティブの制作に生成AIの利用を試みるケースも増えている。「AI活用は必須の時代に」との声も聞かれるようになっている。通販・EC業界においても、AIが当然のように「接客する」「売り上げを作る」時代が到来する可能性がある。
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続々と大型アップデート発表

 生成AIを提供する各社が大きな動きを見せている。OpenAI(オープンエーアイ)は5月13日(米国時間)、新たな大規模言語モデル(LLM)「GPT―4o(オー)」の発表を行った。「o」は「Omni(オムニ、=全て)」を指す。その名の通り、テキストや音声、画像のあらゆる組み合わせで入力・出力が可能だという。処理スピードが2倍になり、より素早い対応を実現。運用コストが半減し、無料版で使用できる機能も大幅に拡大・強化された。同日公開されたデモンストレーション動画では、GPT―4oがまるで人間のように、スムーズに音声で対話する場面が公開され、大きな注目を集めた。
 グーグルも5月14日、生成AIに関する複数のアップデートを発表した。生成AI機能付きのインターネット検索エンジンも提供予定だという。
 その他の生成AIサービスも、日々アップデートを続けており、可能性が広がり続けている。
 通販・EC企業でも、生成AIサービスをビジネスに活用する動きが広がっているようだ。


”AIスタッフ”が売上を作る時代へ

 パル(本社大阪府)では積極的にAI活用を行っている。同社の取締役・専務執行役員・プロモーション推進部部長・WEB事業推進室室長・コミュニケーションデザイン室室長の堀田覚氏は、「AIが必須の時代になってくるが、今後どう活用するかが重要」と語る。
 同社では、4月4日から同16日まで開催したセールイベント「春のパルクロウィーク」に合わせて、自社ECプラットフォーム「パルクローゼット」で、AIサービス「NIAU AI(ニアウエーアイ)」を本格リリースした。顧客一人一人が自分の「似合う」を見つけるための買い物のサポートサービスだという。三つのAI機能で構成されており、2機能(「ファッションメイト」「フェイスチェンジ」)は生成AIによるサービスだ。「『NIAU AI』はAI関連のプロジェクト名でもある。今後さらにAIサービスが増える可能性もある」(同)とも語った。
 「ファッションメイト」では、AIスタッフがチャットによる接客を行うという。
 パルでは、スタッフ約1800人がSNSアカウントで情報発信を日々行っている。全アカウントを合計したフォロワー総数は約1600万人。蓄積したノウハウは社内で共有し、各スタッフがSNS運用を行っているという。パルの24年2月期のEC売上高は、前期比22・3%増の483億9700万円。SNS活用は、同社のEC事業の成長をけん引する大きな要因となっている。
 「ファッションメイト」では、こうしたスタッフのインスタグラムの投稿を、AIが分析・学習。価値観・嗜好・表現手法を理解し、スタッフ本人さながらの投稿やコミュニケーションを実現するという。


2週間で1万回以上利用

 同サービスは、23年の秋に開催した「秋のパルクロウィーク」で実証実験を行った。その際には、AIスタッフが、13日間で5000回の接客を行ったという。
 今年4月の本格リリース後は、インフルエンサースタッフ200人が同サービスに登録。AIスタッフが、2週間で1万回以上の会話(接客)を行ったという。
 「ファッションメイト」のチャット経由での売り上げも上がっているそうだ。


スタッフがチューニング

 スタッフ自身が、「ファッションメイト」のチューニングを行うこともできる。

(続きは、「日本流通産業新聞 5月16日号で)

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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