【加熱するアジア越境EC】 回復進む中国市場/東南アジア、狙うなら今/処理水問題「雪解け」も(2024年1月11日新年特大号)

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 「加熱する東南アジアEC市場に今こそ参入すべきだ」といった声が、越境ECの業界関係者から上がるようになった。今後拡大が確実視されている市場にいち早く参入し、先行者利益を得るべきだというのだ。東南アジア市場への挑戦を始める日本企業も出てきている。一方、東京電力福島第1原発の処理水問題で大きな痛手を受けた、中国向け越境ECの市場も、現在は回復傾向にあるようだ。人口減少から、国内市場の中長期的なシュリンクが避けられないと予想される中、越境ECが注目を集めている。

■処理水問題「雪解け」も

 昨年8月の処理水海洋放出問題が、中国向けの越境ECや輸出に大きな影響を与えた。KOLなど中国インフルエンサーの間では、水産品だけでなく日本商品全般の取り扱いを取り止める動きが一時的に広がった。23年の「独身の日」商戦で苦戦した日本ブランドは多かったようだ。
 しかし中国進出企業によると、現在こうした傾向は「雪解け」に向かいつつあるそうだ。支援会社の調査によると、中国ECモールでの今年10月度の日本ブランドの売り上げは、前月比で回復傾向にあったという。中国インフルエンサーも日本製品の「案件」を受けるようになってきている。
 化粧品・サプリを販売し、23年7月期に中国売り上げ100億円を上げたアクシージアでは、23年10月に中国向けのブランドアンバサダーとして、俳優・歌手の「于文文(ケリー・ユー)」氏を起用した。同社の王志華営業統括部長は、「処理水問題によって、一時的に中国の著名人やインフルエンサーは、日本製品のPRによる露出を控えていたが、現在は復帰傾向にある。起用再開にめどが立ってきた」と話す。
 ただリスクヘッジも含め当面はインフルエンサーマーケティングなどに依存しすぎないビジネスモデルを模索する必要もありそうだ。


■TikTokのECで3倍成長の日本ブランドも

 景気低迷などの影響もあり成長が鈍化している中国EC市場であるが、中国本土版の「TikTok(ティックトック)」である、短尺動画プラットフォーム「抖音(ドウイン)」によるECは好調だ。
 前出のアクシージアは、多数の中国ECプラットフォームに自社店舗を運営しているが、特に「ドウイン」のECが好調だという。同社の23年7月期の「ドウイン」の自社店舗の売り上げは、前期比で3倍に拡大したそうだ。処理水放出後の23年の「独身の日」も成長を遂げたという。
 中国だけでなく東南アジアにおいても、バイトダンス(本社中国)が展開する「TikTok」は存在感を示している。EC機能「TikTok Shop」が、世界各国で続々と実装されてきている。21年のインドネシアを皮切りに、22年4月にはタイやマレーシア、ベトナム、フィリピン、シンガポールで実装された。23年9月には米国でもリリースされている。

(続きは、「日本流通産業新聞」1月11日新年特大号で)

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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