〈インバウンド需要高まる通信教育〉 特化型教材で事業者支援/クロスセル、受講継続につなぐ

  • 定期購読する
  • 業界データ購入
  • デジタル版で読む

訪日外国人観光客は14年に過去最多を記録し、今年も前年を上回るペースで推移している。国内事業者の間では外国語での接客が重要になっているものの、時間の制約から英会話教室に通うことが難しく、教材を入手したりオンライン英会話に入会して、自宅で学ぶ人が多いようだ。通信教育やオンライン英会話実施各社には、接客時の語学を要望する声が寄せられており、接客業専用の英会話教材やプログラムの提供を強めている。

商店街ごとに教材開発

 日本政府観光局によると、14年の訪日外国人観光客数は過去最多の1341万人となった。今年も7月までで1100万人を超えており、勢いは増している。
 世界展開するオンライン旅行会社のエクスペディアでは、15年1―6月における北海道(札幌)から沖縄まで七つの主要都市の旅行予約件数が、いずれも前年同期の2倍前後に拡大。9月30日に九州支店を開設し、九州地方のインバウンド戦略を強化している。
 免税店や知名度の高い観光名所だけでなく、量販店、飲食店、化粧品販売店など、これまであまり外国語対応を必要としなかった店舗にも外国人観光客が押し寄せている。
 こうした動きを受けて、通信教育の「スピードラーニング」を販売するエスプリライン(本社埼玉県、大谷登社長)は13年に、本社のある川越市への地域貢献を兼ねて、「川越一番街商店街」に特化した接客・観光案内の英語学習のCDを開発した。
 現在はスマートフォン(スマホ)の普及に伴い、アプリでも学習できるようにしている。
 川越一番街商店街を取材し、より臨場感のあるストーリーでコンテンツを作ったという。同社は「商店街の人に聞くと、日頃忙しいため『スピードラーニング』の訴求ポイントである『聞き流すだけ』が好評を得た」(事業戦略部)としている。
 川越は14年、前年比約70%増となる約7万7000人の外国人観光客が訪れている。
 英語での接客がますます求められている状況を受け、今年6月からは月に1回、教材で学習する商店街の人を集めてワークショップを開催。20代から70代までが毎回約20人参加し、英語がネーティブの同社の社員と実践的な英会話が行われる。
 ネーティブの社員と英語で会話した後、日本人の社員がフォローに回り、学習意欲を保っている。
 同社は以前から「スピードラーニング」の受講者を集めて、英会話を楽しむリアルイベントを開催してきた。学習仲間を作ることで受講者のモチベーション維持につなげている。このノウハウを川越の商店街でも展開した。
 商店街の人が英語学習に親しみ、商店街に特化した教材をきっかけに、あらゆるシーンの英会話を学習する「スピードラーニング」につなげたいと考えている。
 「今後は川越一番街商店街の事例を生かし、各地の商店街や観光名所でも特化型の教材を提供したい」(伊藤健一執行役員)としている。すでに開発を依頼している地域も出ているという。

(続きは「日本流通産業新聞」10月15日号で)

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

Page Topへ