〈昆虫食EC〉 SDGs追い風に拡大/資金調達の動きも活発化(2021年9月30日号)

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グリラスは廃校を研究施設に

グリラスは廃校を研究施設に

 ECにおいても、「昆虫食」の注目度が高まっている。背景には、「SDGs」の浸透があるようだ。コオロギなどの昆虫食は、サステイナブルな「未来のたんぱく源」として注目され始めている。大手を含め、昆虫食市場の今後の成長性の高さに着目する企業は増えている。この勢いを捉え、成長を加速させるため、大規模な資金調達に乗り出す昆虫食EC企業も出てきている。昆虫食のECや原料の卸を行うグリラスは20年12月、コオロギの自動養殖システムの導入のため、2億3000万円の第三者割当増資を実施。コオロギの自動養殖事業などを展開するBugMo(バグモ)は、クラウドファンディングによる資金調達で、目標額の3.5倍に当たる3500万円を集めた。資金調達の活発化は、昆虫食EC市場の加速度的成長につながる可能性がある。

■グリラスは行政と連携を

 食品ロスを飼料として生産したコオロギを原料にした菓子などの販売を行うグリラス(徳島県)は9月29日、農林水産省が事務局を務めるフードテック官民協議会の下部組織として、「サーキュラーフード推進ワーキングチーム」を新設した。同組織は世界的に発生している食品ロスの問題を背景に発足。40年までに、年間253万トンの食品ロスの活用・循環を目指すとしている。
 19年に徳島大学発ベンチャーとして設立された同社は20年5月に良品計画へのコオロギパウダーの原料供給を開始した企業としても知られている。「無印良品」から発売された「コオロギせんべい」はその後、大ヒット商品となった。「国内における昆虫食の認知は、『コオロギせんべい』のヒットで急速に広まった」(グリラス担当者)と話す。
 20年6月には、東京・日本橋にあるレストラン「ANTCICADA(アントシカダ)」への原料供給も開始。手軽なお菓子から、本格的な料理まで、昆虫食の可能性が幅広いことを、世に知らしめた。
 グリラスは21年6月、昆虫食の自社ブランド「C.TRIA(シートリア)」を立ち上げ、自社ECサイトでの販売を開始した「より近くで顧客の声を聴きたかった。昆虫食の購入層がどういった理由で購入しているのかは、今後の展開において、重要になってくると感じている」(同)と話す。
 同社では20年12月、コオロギの自動養殖システムの導入のため、2億3000万円の第三者割当増資を行った。さらに同社は21年7月、国立研究開発法人新エネルギー産業技術総合開発機構(NEDO、ネドー)から、「NEDO STS事業」としての採択を受け、7000万円の助成金も受けている。助成金により、徳島県美馬市の廃校を整備し、新たに自社研究施設を設けたという。
 「現在流通しているコオロギは、生産効率やコストの面で問題を抱えている。昆虫食の発展には、新品種の開発が必要になってくる」(グリラス担当者)と話す。
 多額の資金調達や助成金、大手との提携は、大手や行政が、昆虫食市場に、本格的に目を向け始めていることの現れといえるだろう。

(続きは、「日本ネット経済新聞」9月30日号で)

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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