【ニュースの深層】□□59 〈消費者庁・徳島移転案いよいよ具体化か〉/河野大臣「極めて前向きに」

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消費者庁の徳島移転問題が大きく前進しそうだ。消費者担当相の河野大臣は1月12日、閣議後の記者会見において、消費者庁の徳島移転について「極めて前向きに考えていきたい」との見解を述べ、政府として移転を決定する方向になる見通しを示した。一方で当の消費者庁の職員は困惑しているようだ。消費者団体は異を唱えている。

 安倍政権は、「地方創生」戦略のひとつとして政府機関の地方移転を唱えている。政府は15年8月までに、国や独立行政法人が所管する機関の誘致に名乗りを上げる道府県を募集した。その結果、42道府県69機関から移転提案が寄せられた。徳島県は、消費者庁と消費者委員会、国民生活センターの誘致に手を挙げた。
 政府は15年12月までに検討対象を34機関に絞った。その中に、消費者庁、消費者委員会、国民生活センターの徳島移転案も含まれていた。移転先と期間は今年3月末までに最終決定する予定だ。
 県では「徳島は消費者行政の全国モデルをつくってきた。迎えるには最適の場所だ」と胸を張る。他の行政機関との連携については「電子メールやテレビ会議等で対応が可能」と説明している。また年末に河野大臣は3月末までに、坂東久美子長官を含む消費者庁職員、約10人を徳島に一週間程度派遣する〝お試し移転〟を実施する予定であることも明らかにしていた。
 1月12日、閣議後の会見に応じた河野大臣は消費者庁の徳島移転について「まだ協議は必要であるが、3月の時点ではゴーだと思う」(河野大臣)と発言。「ただ移転にあたってはまずは課題の洗い出しが必要」とも述べた上で、「極めて前向きに考えていきたい」(同)と結んだ。朝日新聞は1月13日の朝刊で「河野太郎消費者相が、地方創生を担当する石破茂地方創生相と……(中略)……本庁の機能を含めて徳島県に移す方向で一致したという」と報じている。
 消費者庁の職員は地方移転についてどう受け止めているのか。経済産業省から出向しているある職員は「自分のように出向の職員は〝行け〟と言われれば行かざるを得ない。ただプロパーの職員からすると〝寝耳に水〟なのではないか」と話す。「個人的には〝お試し移転〟に参加して徳島の環境を確かめてみたい」ともしていた。
 別の職員は「テレビ会議を整備すれば、中央省庁とのやりとりは円滑に進められるという話もある。ただ、消費者庁以外の関係省庁で、テレビ会議などの設備の整備がどれほどなされるのかが全くわからない以上、業務への支障は避けられないのではないか」と不安を吐露していた。
 今回の移転案について、消費者団体は大反対の姿勢をとっている。これまでに食の安全監視市民委員会、消費生活相談員協会、主婦連合会らが反対意見を表明している。「電話やインターネット、テレビ会議での対応で従来通りの業務が行えるとは思えない」「移転にかかる準備で、現在の業務に支障をきたすのは間違いない」などとし、「消費者庁の移転により、消費者行政に悪影響が出ることは明白」と断固反対している。
 主婦連の河村真紀子事務局長は「一般紙などでは徳島県知事や河野大臣の記者会見上の発言を切り取り『消費者庁の徳島移転がいよいよ具体化する』といった調子の報道がなされている。しかし、行政として公式的な手続きや手順に則った上での発言ではない」と厳しい視線を向ける。「〝お試し移転〟についても、決定までの過程が不明瞭。河野大臣や徳島県知事の諸々の発言の内容は不透明であり不可解だ」(河村事務局長)と批判する。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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