【千原弁護士の法律Q&A】▼195▲ 特商法において本社移転で注意すべき点は?

  • 定期購読する
  • 業界データ購入
  • デジタル版で読む
千葉弁護士

千葉弁護士

〈質問〉

 私は、化粧品を販売するネットワークビジネス(NB)会社の新任の法務担当です。前に勤務していた会社でも法務担当でしたが、この業界はかなり毛色が変わっていて、戸惑うことばかりです。ところで、当社は2カ月後に本社の移転を計画しています。移行期間を含め、特商法において注意しなければならいことを教えてください。また、 商品(化粧品)の箱には、現在の本店所在地が書かれていますが、こちらの修正も必要でしょうか。ディストリビューターには別途お知らせする、あるいは、商品と同梱するといった方法で良いでしょうか。(NB主宰会社法務担当)

〈回答〉  「訂正シール」「差し込み」でも対応可能

 NB関連の法律は独特なので、皆さん、最初はかなり戸惑われるようです。特商法に関して、会社が行政処分を受けると、致命傷になるリスクがあります。また、クーリング・オフや中途解約など、独特の制度があり、十分に知識を蓄える必要があります。
 さて、特商法では、概要書面・契約書面については、リクルートを受ける人にお渡しする時点での本店所在地(登記されたもの)を書かなければなりません。
 本店登記を変更した後に、古い本店所在地が書かれた書面を渡せば、「不備書面」ということになります。不備書面となれば、行政処分のリスクの他に、永久にクーリング・オフを主張される可能性があります。
 なお、住所の訂正については、「訂正のシールを貼り付ける」あるいは「差し込みを入れる」などの方法でも構いません。
 移行期間については、たとえば「2015年9月末日までの本店所在地○○、2015年10月1日以降の本店所在地○○」のような表示をする、あるいは差し込みを入れる方法でも良いです(むしろその方が親切ですね)。
 差し込みは仮の手段として、移転後は、なるべく早く正式に変更内容が印刷されたものに移行されるのが良いと思います。
 続いて、化粧品に表示される住所ですが、薬機法(旧称薬事法)は、化粧品について「容器または直接の被包(※パッケージ)」に「製造販売業者の氏名、名称または住所」を記載すべきとしています。
 さらに、「化粧品の直接の容器または直接のパッケージが小売のために包装されており、上記の表示がビニールのように透かして見ることができないときは、その外部の容器または外部のパッケージにも、同様の事項が記載されていなければならない」としています。
 そこで、貴社の「製造販売業者」の住所変更の場合は、ディストリビューターに別途通知する、あるいは、訂正文書を同梱するだけでは、薬機法の要件を満たさないということになります。外部から容易に確認できる外箱や容器に変更後の表示をする必要があります。こちらも上からシールを貼る形でも問題ないと思います。


〈プロフィール〉
 1961年東京生まれ。85年司法試験合格。86年早稲田大学法学部卒業。88年に弁護士登録して、さくら共同法律事務所に入所し、94年より経営弁護士。現在、130を超える企業・団体の顧問弁護士を務める。会社法などの一般的な法分野に加え、特定商取引法・割賦販売法・景品等表示法・知的財産法を専門分野とし、また、数多くの大規模企業再生・倒産事件を手がけてきた。業界団体である全国直販流通協会の顧問を務める。著書に「こんなにおもしろい弁護士の仕事」Part1~2(中央経済社)などがある。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

千原弁護士の法律Q&A 連載記事
List

Page Topへ