東北経済産業局/東北6県の広域支援を強化/特商法のノウハウ共有で適正な法執行

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 経済産業省東北経済産業局(所在地宮城県仙台市)が、東北6県における消費者行政の支援に力を入れている。7月14日に発表した、16年度(16年4月―17年3月)に東北経済産業局消費者相談室に寄せられた、特定商取引法関連の相談は、前年度に比べて件数が増加した。一方で東北各県における特商法の執行専門職員は1~2人など少人数での対応を迫られている。行政処分や行政指導を共同で行うなど、実働における地方の経済産業局の支援が不可欠になっている。


 経済産業局は経済産業省における地方の出先機関。同時に、消費者庁から委任を受け、経済産業省が共同で所管する特定商取引法の執行機関としても機能しており、全国9カ所にある。
 経済産業省東北経済産業局の産業部消費経済課の職員は16人(非常勤含む)。特定商取引法担当が3人(同)、割賦販売法担当が4人(同)、消費者相談室が4人(同)などで構成する。職員は2~4年で異動するため、「執行に齟齬(そご)のないように引き継ぎをしている」(遠藤司消費経済課長)と話す。
 ここ数年は、消費者被害が広域になる傾向があるという。各県の消費者行政は、行政処分を実施してもその県でしか効力が及ばないため、事業者が他の地域に移って同様の違法行為を続けることも多いという。そのため、各県で起こった消費者トラブルを吸い上げ、事業者への立ち入り調査などを共同で行い、行政処分を合同で実施することもある。毎年10月頃に、各県の特商法執行担当職員を仙台に集めて情報交換を行い、定期的な情報交換を個別に実施することで端緒情報の入手に努めている。
 こうした取り組みが形に表れている。17年3月に、寝具訪販の「羽毛リフォームセンター」(本社北海道)に対する6カ月間の業務停止命令の事案は、立ち入り調査を青森県と北海道が合同で実施。過去の処分歴や今後の被害拡大防止を踏まえ、全国的に効力が及ぶように東北経済産業局も行政処分することに決めた。
 実際、東北6県における特定商取引法における行政処分件数は多くはない。1997年以降で東北6県の業務停止命令は34件。都道府県の合計が667件であることを考えれば他の地域に比べて少ない。
 東北各県の特商法執行担当職員は1~2人だ。消費者被害が多様化する中で、1人で立ち入り調査などを行うことは現実的ではない。「特商法による執行はノウハウの塊」(遠藤課長)と話すように、東北経済産業局では、各県が抱える課題を解決するため、積極的にノウハウの提供や、合同での立ち入り調査を進める。立ち入り調査や執行に対する人件費などの費用はそれぞれが負担するという。
 東京都などが中心となって首都圏で合同執行する組織「五都県悪質事業者対策会議」のような組織は、東北にはない。そのため、東北6県においては、東北経済産業局のいっそうの支援が重要になりそうだ。遠藤課長は「行政処分ありきではなく、消費者被害が生じないようにするのが役割」と話す。

■特商法関連が増加傾向に

 7月14日に東北経済産業局が公表した、16年度(16年4月―17年3月)に同局消費者相談室に寄せられた相談では、特商法関連の相談が全体の約6割を占めた。特に、布団の打ち直しや太陽光発電、住宅リフォームなどの訪問販売が目立つ。太陽光発電では、売電収入に関するトラブルが増えている。エステや家庭教師などの特定継続的役務提供(特役)、健康食品、アダルトサイトなどの通信販売、健康食品などの電話勧誘販売の3取引についての相談が続く。特役関連では、中途解約に関して返金額の算出方法に関する相談が多い。
(続きは、「日本流通産業新聞」7月27日号で)

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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