無店舗販売化粧品16年度売上高調査/上位52社合計8019億円/実質成長率は1.9%減

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 日本流通産業新聞は6月、通信販売会社と訪問販売会社を対象に2016年度の化粧品売上高を調査した。上位52社の合計は8019億7400万円。本紙推定の売上高も含め前年度調査と比較可能な48社の実質成長率は前年度比1.9%減だった。通販市場ではプラス成長の企業が目立った一方、訪販市場では減収となった企業が多く、全体としてはマイナス成長となった。

《通販化粧品/拡大見込める希少市場》

 日本流通産業新聞が6月に実施した「化粧品通販売上高ランキング」調査では、72社の合計売上高が5293億5300万円となった。前年調査と比較可能な14社による実質伸び率は7.7%増となっている。化粧品の市場規模は近年、横ばいで推移しているといわれている。その中にあって化粧品通販市場は数少ない成長市場と見込まれている。
 本紙調査による対象期間は16年4月から17年3月に迎えた決算期。同様の期間を調査結果とした公益社団法人日本通信販売協会(JADMA)の平成28年度売上高月次調査のまとめによると、消費者向け通販市場で成長が目立つのは化粧品となっている。
 JADMA調査によると、会員企業117社の合計売上高は1兆3326億3100万円で、前年同比0.1%減となっている。これを品目別で見ると、化粧品通販の売上高は1047億600万円で同6.6%増。
 他の品目では文具・事務用品が同7.8%増となっているが、これはBtoB通販がけん引しているとみられ、消費者向けでは化粧品が著しい成長を遂げている。
 ここ数年、化粧品通販事業者を買収する動きが顕著なのは、こうした化粧品通販市場の成長性が背景にあるものとみられる。
 ただ、従来のマス広告による新規顧客の獲得は効率が悪化しつつあり、新規顧客獲得コストを削減する一環としてネット広告にシフトする動きも顕著だ。その意味ではアテニアが17年3月期、SNSやオウンドメディアを活用して新規顧客を増やしたことは同業他社から注目されそうだ。
 国内化粧品市場を予測すると、百貨店の相次ぐ撤退で海外をはじめとするラグジュアリーブランドの行き場が気にかかる。ブランド力を維持するとなれば、安易にECへシフトするのは慎重となりそうだが、昨今のEC市場による成長力は無視できなくなっているとの見方もある。
 有力ブランドがECを本格的に強化してきたとき、既存の化粧品通販事業者とのすみ分けや競合関係はどのようになっていくのだろうか。あるいは化粧品通販事業者がブランドに対して対抗していくことは可能なのか。すでにその状況を見極めようとしている化粧品通販事業者は少なくない。



《訪販化粧品/各社で人材育成が課題に》

 訪販においては、実質成長率が1.9%減となり、市場はやや縮小する形となった。訪販業界では、前年と増減率が比較可能な24社の内、減収となった企業が15社だった。ただ、減収企業の内12社が6%以内の小幅な減収だった。
 前期比2ケタ超の増収を記録したのは、アイビー化粧品だった。16年9月の新商品投入と、ハワイ研修キャンペーンの募集定員の大幅な拡大が奏功し、業績が好調に推移した。新商品と既存の高級化粧品との併売効果も発生し、利益率も上昇。営業利益は前期比72.9%増の10億9000万円だった。
 ヤクルト本社は、17年3月期中に主力商品である「パラビオ」のスキンケアシリーズのフルリニューアルを図った。販売員の数は前期比400人減となったが、商品施策と販売員の販売力強化で、化粧品売上高を0.5%の減収で押しとどめた。
 シーボンの化粧品売上高は、前期比2.4%減の121億7200万円だった。売上高は減少したが、17年3月期中の新規顧客数が前期比で10.9%増加したため、18年3月期の既存顧客による売上高は高まると予想している。
 ポーラは、「抗シワ」の薬用化粧品がヒットを記録する一方で、販売員が肌の分析データを基に提供する、カウンセリング化粧品の販売も強化している。ナリス化粧品も17年8月にカウンセリング化粧品の新シリーズを発売する。シーボンは17年4月から、全国のサロンへの肌分析システムの機材の導入を順次進めている。
 本社からカウンセリング方法などについて指導を受けた販売員が、顧客に肌のカウンセリングを提供しながら商品を販売するという手法が、今後増えていくと予想される。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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