ロッカー、郵便受けが多様化/需要の高い設置場所探る/家庭用ポストも進化

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イオンモール幕張新都心店に設置さたネットスーパー用受け取りロッカー

イオンモール幕張新都心店に設置さたネットスーパー用受け取りロッカー

 再配達率の削減と、顧客ニーズへの対応を目的に、通販業界では商品受け取りサービスが多様化している。大手各社を中心に、コンビニとの提携で店頭受け取りを可能にするだけでなく、駅や商業施設などに受け取りロッカーを設置して受け取り場所が拡大している。各社ともロッカーの設置場所においてはニーズの高い場所を探るマーケティングが続いている。郵便受けに投函するだけで配送が完了する「メール便」の通販利用も多い中、各家庭に設置する郵便受けもさまざまに進化している。


《JP、幅広い企業に利用開放》
 ターミナル駅や大型商業施設を中心に各社が普及させている通販の受け取りロッカー。配送時間帯に自宅で待機できない顧客や、配送業者と玄関先でやり取りすることに抵抗を感じる顧客のほか、通勤や買い物のついでに利用する顧客のニーズを捉えている。
 ロッカーに入るサイズの制限や、商品を持ち帰る手間の関係で、コンタクトレンズ、かさばらないアパレル商品、小物雑貨などで利用されているようだ。
 他社に先駆けて受け取りロッカーの設置を始めたのが楽天。14年5月に受け取りロッカー「楽天BOX」のテスト運用を開始し、2年たった現在は全国に23カ所設置している。
 3月末で北海道の麻生駅と、テスト運用開始時から設置していた大阪のなんば駅のサービスを停止したが、利用率の問題ではなくテナントとの契約期間が終わったためだ。このため、サービスの「終了」ではなく「停止」と説明しており、ユーザーのニーズ次第では再開もありそうだ。
 15年4月に日本郵便と楽天の取り組みで試験的に開始した、都内の郵便局に設置する受け取りロッカー「はこぽす」は、半年間の試験運用期間は「楽天市場」の出店者の利用に限っていた。本格展開を決定した後、日本郵便を利用する通販会社にも開放して利用を促している。
 今年3月には、不在で受け取れなかった「ゆうパック」を「はこぽす」で受け取れるようにして、再配達削減に向けてさらに前進した。
 4月からはディー・エヌ・エーの子会社のモバオク(本社東京都、八津川博史社長)が運営するオークションサイト「モバオク」で落札した商品も受け取れるようにした。
 9月からは、ブックオフコーポレーションの子会社のハグオール(本社東京都、宮崎洋平社長)が運営する中古品買い取り通販サイト「ハグオール」で、商品を売りたい利用者が商品を発送する時に「はこぽす」を利用できるようにしていく。
 今後は他社の宅配便の受け取りも可能にしようと検討している。
 設置場所も郵便局以外に、京王井の頭線の駅や商業施設への設置を進めている。
 24時間対応の郵便局ではいつでも受け取りが可能だが、それ以外の郵便局は営業時間内に受け取らなければならなかった。これを解決すべく、今年3月に24時間の郵便窓口「ゆうゆう窓口」が設置されていない郵便局も屋外設置を始め、24時間の受け取りを可能とした。

《グループの店頭に設置場所拡大》
 9月から「はこぽす」で商品を発送できるようになるハグオールも、自社で買い取り専用ロッカー「スマート買取ショップType(タイプ)」の普及を進めている。
 15年10月に「ららぽーと横浜」で設置したのを皮切りに、都内のマルイやショッピングセンターなどに設置場所を拡大。特に親会社のブックオフコーポレーションが運営する「ブックオフ」の店頭の設置拡大が加速している。
 ハグオールは13年4月の事業開始以降、商品点数拡大のため「「スマート買取ショップType」のほか、日本橋三越本店の「総合買取ご相談窓口」を開設するなど、買い取りに力を入れてきた。商品点数が増えたことで売り上げは拡大し、16年3月期の売上高は前期比112・2%増の9億7000万円となった。
 買い取り強化への投資がかさみ、営業損失は4億8100万円(前期は4億4200万円の営業損失)となった。しかし、16年3月の月間買い取り金額は半年前の8割増となる約9000万円に拡大し、買い取り金額より売り上げが上回っている状態のため、今期には黒字転換していく見込みだ。
 イオンリテールのネットスーパー「おうちでイオン」はロッカー需要のマーケティングを繰り返している。千葉みなと駅のように需要が少なくロッカーの設置を終了した場所もあるが、ニーズを探って新設も積極化している。5月にはイオンモール幕張新都心店に、商品受け取りロッカーを店内2カ所に設置した。
 イオンリテールのネットスーパーは、受け取りロッカーの設置や玄関先に商品を置く「置き楽」を実施しているほか、グループのコンビニエンスストア「ミニストップ」5店舗の店頭での商品受け取りも開始した。
 今後はグループのスケールメリットを生かし、食品スーパー「マックスバリュー」「まいばすけっと」の店頭でも商品受け取りができるようにしたい考えだ。


(続きは、「日本流通産業新聞」6月2日号で)

メール便が入りやすい広い投入口だが、中身が取り出せないセキュリティー仕様の「クオール」

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記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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