〈機能性表示食品制度・ガイドライン改正〉 ”安全性に係る事項”3点追記/これまでの届け出受理、今後NGの可能性も

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 消費者庁は4月1日、機能性表示食品制度における届け出を電子化した。あわせてガイドラインの改正も実施した。制度を取り巻く動向や、改正ガイドラインに込められた意味、今後の見通しなどを、消費者庁や有識者への取材内容を踏まえ、読み解く。

【拡充版〝NG表現リスト″は盛り込まれず】
 4月1日から、機能性表示食品制度の届け出が、郵送による方法からウェブやメールを用いた方法に改められた。届け出の電子化に伴い、消費者庁は届け出情報のデータベース(DB)を構築する。DBでは、「届出番号」「届出日」「届出者」「商品名」「機能性関与成分名」「原材料名」「表示」「評価方法」の各キーワードで届け出情報を検索することが可能になる。DBの検索画面はすでに消費者庁のウェブサイト上で公開されているが、4月13日時点では、まだ情報が登録されていない。消費者庁では「15年度中の届け出情報は現在データの移行中」(食品表示企画課)と言う。「できるだけ早い段階で公開できれば」(同)としている。
 ガイドラインの改正内容は、3月17日に開催された検討会の場で「案」として示されたとおり、届け出の電子化に伴う内容の修正と、安全性の確認事項に関する追記がなされた。
 なお、今回の改正では一部説明会などで示されていた、いわゆる〝NG機能性表現リスト″の内容は盛り込まれなかった。この件について消費者庁では「改正ガイドラインに盛り込まれなかった理由についてお答えできることはない。ガイドラインはあくまでガイドラインなので」(食品表示企画課)などとコメントしている。

【トクホ安全審査の有無、食薬区分の確認求める】
 今回の改正において、大きなポイントとなるのは、やはりガイドラインの「資料作成に当たっての考え方」内の「安全性に係る事項」に追記がなされたことだろう。
 追記された主な内容は(1)食経験に基づく安全性評価に加えて、安全性試験を実施するなど二重三重に安全性を評価してもよいということ(2)専ら医薬品として使用される成分本質(原材料リスト)」に含まれる成分ではないことを確認すべきこと(3)特定保健用食品(トクホ)における安全審査の有無を確認すべきこと109640の3点。
 ただ、この3点をなぜ今、あえてガイドラインに追記したのかについては疑問が残る。3点とも業界ではすでに、「当たり前のこと」として受け止められていたことだからだ。識者への取材の結果、3点にはいずれも、追記すべき特別な事情があることが判ってきた。
 「食経験評価」に関連する追記としては、「食経験に関する評価が十分である場合に既存情報による安全性の評価を行ったり、食経験および既存情報による安全性の評価が十分な場合に、安全性試験を実施して安全性の評価を行ったりすることは差し支えない」と新たに記載を加えた。
 この点について、(一社)日本健康食品規格協会(事務局東京都)の池田秀子理事長は「要は、安全性の確認を二重三重と厳重に行うことは問題ないということで、遠回しに〝安全性の確認″を厳格にやれと言っている」と解釈。「届け出製品の販売実績のみをもって食経験ありとしている届け出が多いことについて消費者団体からクレームがついていることが背景にあるのではないか」(池田氏)とみる。池田氏は続けて「強い言い方をせずに安全性の確認をしっかりやらせるために、あえてこのように遠回しな書き方の文をさしこんだのではないか。また消費者団体に対しても(消費者庁は安全性の問題にしっかりと対応しているという)ポーズをとったということではないか」と分析している。

【「蹴脂粒」「チアフル酵母」受理が影響?】
 「トクホの安全審査の有無」を確認すべきことが改めて追記された点については、背景にリコムの問題があるとみる識者が多い。リコムの機能性表示食品「蹴脂粒」については、トクホの安全審査が保留となっている中、機能性表示食品の届け出が受理されたことが、消費者団体から問題視された経緯があった。「蹴脂粒」の届け出は取り下げられておらず、現在も商品の販売が続けられている。こうした経緯もあって、確認事項として追記されたとみられる。
 リコム(本社東京都、浜屋忠生社長)では「(ガイドライン改正後に)消費者庁から何か指摘を受けたということはない」(管理部)と話す。
 「食薬区分」を確認すべきということが盛り込まれた点については、食薬区分で〝薬″に分類されている「S―アデノシルメチオニン」を機能性関与成分とする届け出が16年2月に受理されたことが影響したと多くの識者は考えている。
 そもそも「S―アデノシルメチオニン」を機能性関与成分とする届け出が、なぜ受理されたのかが、いまだにはっきりとしていないのだ。
 同成分を機能性関与成分とした「チアフル酵母」の届け出が受理されたインマイライフ(本社熊本県、豊原龍太郎社長)では「酵母の形状であるため、健康食品扱いになると認識している。届け出のやり取りの時点では、(機能性関与成分について)消費者庁から特段指摘を受けなかった」(豊原社長)としている。同商品の製造元であるOEMメーカーのオムニカも「酵母の形状であるため、健康食品扱いになると認識している」との見解だ。

【沈黙する消費者庁と厚労省】
 消費者庁は「一般論としては食薬区分で『薬』に分類されている成分を機能性関与成分とした届け出は認められない」(食品表示企画課)としながらも、今回の受理については「個別の案件については回答しかねる」(同)としている。また、食薬区分リストを管轄する厚生労働省も「機能性表示食品制度の管轄は消費者庁なので、消費者庁の見解を聞いていただきたい」とにべもない。

(続きは「日本流通産業新聞」4月14日号で)

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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