【EC売り方研究所】特別インタビュー:北京天下秀科技有限公司 李檬CEO/中国でのSNSマーケティング

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”中小企業の中国越境ECはSNS活用がカギ”

 国内EC企業が中国市場でネット販売する際に、SNSを活用することの重要性が増している。中国では、ECモールの広告費が高騰している一方、SNS上のプロモーション効果は高まっているのだという。中国のSNSマーケティング専門会社・北京天下秀科技有限公司(IMS社)はSNSのインフルエンサー(影響力の高いユーザー)を活用したマーケティングサービス「WEIQ(ウェイキュー)」を提供している。IMS社は今年4月に、アライドアーキテクツと提携を結んでおり、現在では日本企業も「WEIQ」を手軽に活用できる。IMS社の李檬CEOに中国におけるSNSマーケティングのポイントを聞いた。



ーー「WEIQ」を活用するとどのようなプロモーションができるのか。
 まずは広告主が提供したい商品の特性をお聞きし、当社がつながっている約60万人のインフルエンサーの中から商品に合ったユーザーを探し出すことができる。そして予算に応じて、広告主の商品情報を、中国の大手SNS「微博(ウェイボー)」「微信(ウィーチャット)」内のインフルエンサーに発信してもらうといった手順だ。コンテンツのパターンは二つある。広告主が企画したセールやイベントの情報をそのままインフルエンサーに流してもらうパターンと、もう一つはインフルエンサーに商品を提供、利用した感想などをインフルエンサーの言葉で発信してもらうパターンだ。自社の商品をどう売り込めばいいか分からないという日本の広告主は、アライドアーキテクツと一緒に戦略を立案してからコンテンツを作成することができる。

ーーどのようにインフルエンサーをピックアップするのか。
 「WEIQ」はビッグデータに基づいたシステムとなっている。インフルエンサーの特性を定量的に分析しており、プロモーションごとにインフルエンサーを自動的に抽出することが可能だ。例えば金融業界で働く、あるインフルエンサーのフォロワーの多くはグルメへの関心が高い。というのもこのインフルエンサーはお金持ちであり、さまざまなおいしいものを食べて情報を発信している。彼のフォロワーは彼がどういう株を購入しているかではなく、どんなレストランに行っているかに関心があるのだ。同じように、会社を経営している、あるインフルエンサーのフォロワーは、彼の経営については関心がないが、彼がどのような服を来ているのかについては関心を持っている。当社はデータ分析によってインフルエンサーやそのフォロワーの特性を把握しているのだ。

ーー「WEIQ」を活用した具体的な事例は。
 飲料メーカーが映画とタイアップした商品をSNSでプロモーションしたところ、わずか4時間で予定数を完売した。この事例の際に活用したインフルエンサーは30人以下だったが、彼らの投稿をきっかけに、1000万件以上のディスカッションがSNS上で巻き起こった。このように映画やテレビと、SNSを連携させたプロモーションは、中国企業においては一つのトレンドとなっている。中国で人気があるお酒のブランドはテレビとSNSを連動させたプロモーションに2億〜3億元(33億〜50億円)を費やした。その結果、このブランドの売り上げは約7倍に増加し、数十億元規模にまで拡大した。

ーー中小企業がSNSでプロモーションするのは難しいのか。
 中小企業こそSNSを活用するメリットは大きいと考えている。タオバオやTモール内でトラフィックを獲得するコストはかなり高い。例えばTモールでフェイシャルマスクの広告を1クリックさせるためには10元(約166円)かかるといわれている。これはかなり高い金額だ。なぜそんなに広告コストが高いかというと、大手企業が先行投資により、良い消費者をすでに囲い込んでいるからだ。その状態の中で新たなユーザーを引っ張ってくるには大変なコストがかかる。Tモールで1人の顧客を獲得するのに10元かかったとしたら、ウェイボーなら2元で獲得できる。広告費を抑えるためには、タオバオやTモール上にいるユーザーを獲得するのではなく、モールの外にいるユーザーを獲得するのが得策なのだ。タオバオの店舗は毎年3割が撤退するといわれている。日本から新規参入した中小企業の場合、SNSを効果的に活用しなければうまくいかないだろう。

(続きは、「日本ネット経済新聞」5月12日号で)

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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